ヒマラヤ高峰にあるギャチュンカン北壁を夫婦のクライマーが挑む。“壁”は想像以上に手ごわく、下降に難渋をきわめる。死をかけてまでなぜ山に登るのか。「登るに値する山」には、「自分の力を引き出してくれる可能性」があり、そこで「自分の力」を実感できるから。明晰で無駄のない文章。息づまる臨場感。しんどい内容なのに、ある種の心地よさも。登山を通じた「夫婦愛の極致」を描く秀作ノンフィクション。