「神も不死もなければ、すべては許される」。ならば、親殺しも? ロシアの名だたる文豪、ドストエフスキーの文学を大きく花開かせる原基となったもの。小説を書きたいという止みがたい欲求を生み出したのは、何よりも少年時代の「傷(トラウマ)」の痛みだった。彼の作品群を、「父殺し」と「使嗾(他人を唆すの意)」をテーマに、重層かつ多面的に読み解く。家族や社会が荒む現代。ドストエフスキーの放つ言葉をかみしめるよい契機かも。