時は幕末から明治にかかる激動期。キリシタン類族の若者、宇源太が主人公。キリシタン類族とは、キリシタンであった親族が拷問のすえ仏教徒に改宗させられた人たち、いわゆる「転びキリシタン」の子孫である。彼らは幕府から監視され、近隣の村からは村八分同然に扱われた。仏教や神道という宗教心、あるいは政治や道徳がからむ根源的テーマに、作者が真正面から立ち向かった読みごたえのある作品。