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心に響くこの一冊

『悪の愉しさ』


石川達三 角川文庫

 大きな製鉄会社に勤める平凡なサラリーマンが主人公。彼は、心のなかではいつも退屈していた。「麻雀、競輪、会社の仕事、女遊び、みんな退屈だ。何ということもない。そのために頭の中がひっくり返るような大きな事件にぶつからなくては」、と思うようになる。虚無感、劣等感、復讐心など心理描写は秀逸。「虚栄とは自分の心の貧しさをひけらかすようなものだ」というフレーズが印象に残る。


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