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心に響くこの一冊

『苦海浄土 新装版』


石牟礼道子 講談社文庫

 漁師たちが“わが庭”と呼ぶ美しき豊饒の不知火海。「魚は天のくれらすもん」と信じる純朴な漁民。「そこに生きる生命の根源に対して加えられた」「近代産業の所業」。水俣病患者たちが取り戻したかったのは、自然に依拠したささやかな暮らし。そして人間としての尊厳。「この土地をめぐっている地下水のような、尽きぬやさしさ」を凝縮した言葉が静かに強く胸を打つ。


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