元裁判官の隣家に、かつて無罪判決を下した男が引越してくる。生活感あふれる日常は、徐々にアブノーマルな非日常に侵蝕されていく。嫁姑問題から老人介護まで、作者の問題意識の間口は広く、深化の度合いも相当なもの。心の疼きを他人の助力(他人への攻撃)で癒そうとする犯罪者の心理分析も細密。裁判官の世間との乖離や刑事裁判制度の限界をシニカルに造形している。