「江夏の21球」が珠玉の一篇。1979年、近鉄対広島の日本シリーズ第7戦。スコアは4対3で広島リード。9回裏近鉄最後の攻撃。ワン・アウト・フルベースという最大の山場を迎える。江夏の一球一球をめぐって、選手の思惑が交錯する濃密な時間を再現する。真剣勝負の野球の世界は人間現象の縮図である。敵、味方を問わず、人の心のうちを読み合う心理戦と駆け引きが、読者を再びエキサイトさせる。