「善人なおもて往生をとぐ、いわんや悪人をや」。逆説に満ちた「悪人正機」説。だがその真意は、「自分を善だと思っている人間は、どこかに自力を頼みとするおごりの心」をもっており、謙虚さをもたねばならない、ということ。人間の善行(人助け)には、初めからある限界があり、大きなスケールをもつものと錯覚してはいけないという戒めなのだ。善と悪をつきつめた親鸞は、もはや「宗教家というより、思想家」である。