夫は女を外にこしらえ、三日と続けて家にいなかった。妻のがまんはある日爆発。夫に対し、「妻が偏執の目つきになって、過去の行状の尋問をはじめる」。いつ果てるともない疑惑と発作、詰問と錯乱の日々。「自分の罪業のむくい」とはいえ、その後の夫の妻への献身は、稀有ではあるが一つの夫婦愛のかたち。過去は記憶の中にしかない。作者が修羅のときを追想し、言語化する作業も辛かったに相違ない。