つつましく勤勉に生きる庶民の視点からぶれることのなかった民俗学者、宮本常一氏の自叙伝。民俗学は、「体験の学問であり、実践の学問である」を、信条にしていた。進歩とは、発展とは何か。すべてが進歩しているのであろうか。「進歩のかげに退歩しつつあるものを見定めてゆくことこそ、今われわれに課せられているもっとも重要な課題ではないか」という重いメッセージを遺している。