1960年代初頭。東京オリンピックの少し前。自動車産業勃興期の産業スパイ小説。無人踏切で新型車が列車衝突事故を起こすのを皮切りに、競争会社の紙クズ集め、密告、盗聴、誘惑、業界紙の扇動等、熾烈な情報収集合戦、攪乱戦術や策謀が渦巻く。極めつけは、ライバル会社の窓越しの会話を読唇術で解読する場面。高度成長期に突入した頃の躍動感あふれる人間模様と上昇志向を共有していた時代の雰囲気を感じとれる。