危険思想を取り締まる苛酷な法が制定され、外国人に本能的な警戒心を抱いていた戦前の日本。大胆にも、外国の通信員を隠れみのにして、外国のスパイが国家の心臓部まで侵入していた。その名もゾルゲ。自立心に富み、純粋で強靭な精神力。他方で、酒と女への耽溺。自分の地でいき、それが逆に完璧な偽装となった。ゾルゲ事件が、その後の東西両陣営に対し、生の情報がいかに有益かを再認識させる契機となったことは言うまでもない。