「彼」は、夜行の“銀河”で出かけて行って、“こだま”で帰ってきた。中国の奥地から。30年ぶりに。大学紛争激しかりし頃、殺人未遂で指名手配を受けていた。あげく、行きも帰りも密航。早速、家族の消息をたずね、戸籍の復活を試みるのだが――。現代の浦島太郎よろしく、おろおろしたり、歓声をあげながら、変貌した東京をノスタルジーをこめて浮かび上がらせる。書き手には、歴史や世相をみる確かな視角と豊かな想像力が求められる。