70になったら神が住む“楢山まいり”に行く、というのが村の「掟」であった。いわゆる姥捨てをテーマに、人の世のやさしさと厳しさの相克を描く。それにしても、主人公おりんの泰然自若とした振る舞いとその潔さよ。銭屋の老父又やんや『補陀落渡海記』(井上靖著)に出てくる住職金光坊とはエラい違い。腹をくくったときは女性の方が強いのかも。