名もなき庶民が生きていく拠りどころとなる言葉を、代表作から引用した箴言集。個々の作品の脈絡のなかで味読すべきという見解もあるやもしれぬが、ファンには堪らない。就中、作者の人に対する“思いやり”は海のように深い。ある文学者の会合で、某作家が周五郎さんの仲間に放った無神経な一言に立腹し、絶交を宣して退席したというエピソード(文庫「解説」)がそれを物語る。今も真摯に気高く生きることを鼓舞してくれる。