金融再編成を前にして、銀行オーナーとしての企業的野心をむき出しにして“小が大を喰う”合併をもくろむ。作者は元新聞記者だけに、取材力には定評がある。政略的な閨閥づくり、妻妾同衾、出生の疑惑等、モラルとインモラル、表と裏、硬軟おりまぜた“落差”を十分娯しめる。象徴的導入部、絢爛な装置、小道具、効果的メタファー等の技巧もこらす。壮大な人間ドラマであり、これぞエンターテイメント。