釜山で三つのスーパーを経営するオーナーが、会長職を退いたのを機に、三度めの海峡を渡る。強制連行、炭坑での強制労働や虐待など、歴史の波に翻弄される過去と現在をていねいに描く。冷徹な史実への視点と確かな人権感覚に裏打ちされた上質で格調高い小説。人間とは、愛とは、運命とは何か、という普遍的テーマに真正面から迫り、私たちの魂を揺さぶる。作者は、テレビ局勤務後、精神科医になる、という異色作家。