梶は「召集免除」という美味な餌と引換えに、植民地にある鉱夫の労務管理を引き受ける。美人の新妻を伴って。しかしやがて反古となり軍隊に召集。激戦。敗残兵。最後は捕虜。すべては自分の意志以外の力で時代が進行し、人は抗う術を持たない。今生の地獄ともいえる極限状態にあっても、なお人間であり続けようとする煩悶。愛も人心も戦争の中で溶解する。愚劣な戦争を心ある市井の人間の視点から描く慟哭巨篇。