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労働実務Q&Aこれで解決!

マタニティハラスメント

Q.

 最近、女性の妊娠・出産を理由とする不利益な取扱いや職場の嫌がらせが問題となっています。厚労省の実態調査によると、不利益取扱いの内容としては、解雇、雇い止め、賞与の不利益算定、退職強要や非正規への転換強要、減給、降格など、多岐にわたっています。「迷惑」・「辞めたら?」等、権利を主張しづらくする発言をあびせられた経験者が半数近くあったとか。注目を受けた最高裁判決やそれを契機にした行政や法律改正の動向を教えて下さい。

A.

 女性の妊娠・出産・育休の取得などを理由に、解雇・雇い止め・降格などの不利益な取扱いをすることを一般に「マタニティハラスメント」とか、略して「マタハラ」といいます。女性労働者が妊娠中に軽易な業務への転換を求めたところ、副主任から降格され、育休後も副主任を任ぜられなかった事案において、最高裁は、降格措置を原則として均等法9条3項で禁止される不利益取扱いに該当すると判断。これを受けて、行政、立法サイドの見直しが始まりました。


◆マタ八ラと現行法の禁止規定

 女性労働者が妊娠・出産したことを理由とする事業主による不利益取扱いについては、現行法上も次のような禁止規定があります。
 男女雇用機会均等法では、「事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法第65条l項による休業を請求し、又は同項もしくは同条第2項の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であって厚生労働省令で定めるものを理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益取扱いをしてはならない」(9条3項)と規定。
 育児介護休業法でも、「事業主は、労働者が育児休業申出をし、又は育児休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない」(10条)と、同様な規定を設けています。
 法律上の論点としては、①企業が当該女性労働者に対して行った人事上の措置が条文上の文言である「不利益取扱い」に該当するか、②その不利益取扱いが、女性労働者の妊娠・出産を理由とするものか、の2点に集約されることになります。


◆均等法・育介法の新通達および法改正

 先の最高裁判決(広島中央保健生協事件 最判平26・10・23)を受けて、厚労省は、均等法、育介法の行政解釈を見直す通達を発出しています(平27・1・23 雇児発0123第1号)。
 要は、均等法や育介法の違反の要件となっている「理由として」の判断基準。通達は、妊娠・出産・育休等を「契機として」不利益取扱いを行った場合は、原則として妊娠・出産等を理由として不利益取扱いがなされたと解される(事由と不利益取扱いとの間に因果関係があるので)とし、法違反になる、としました。
 平成28年3月29日には、均等法・育介法が改正(平成29年1月1日施行)。従前から規定されている不利益取扱い禁止義務に加え、妊娠・出産・育児休業・介護休業等を理由とする、上司・同僚などによる就業環境を害する行為を防止するため、雇用管理上必要な措置を講ずることが義務づけられました。


◆企業におけるマタハラ対策

 法が定める「雇用管理上必要な措置」とは、マタハラ禁止に向けての労働者への周知・啓発、相談体制の整備等が想定されています。今後発出される指針等を踏まえ、各企業で検討することが求められます。
 就業規則等には、マタハラの定義、禁止規定、違反の場合の懲戒処分を設け、従業員に周知させる必要があります。
 就業環境を害する行為の防止という観点からは、研修も欠かせません。訴訟対策上、研修日時、参加者、内容がわかる日報等を文書として残しておくことも重要です。

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