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労働実務Q&Aこれで解決!

職務発明

Q.

 従来、従業員が職務で発明した場合、特許を受ける権利は発明者個人にありました。発明者は企業に利益をもたらした見返りとして、企業から対価を得ることになります。対価に納得できず、訴訟になることも。青色発光ダイオードの開発でノーベル物理学賞を受賞した中村修二氏は2001年、対価を求めて元勤務先を提訴。200億円を認めた一審判決は世間を驚かせました(翌年8億円で和解)。この職務発明制度の見直しを含む特許法が改正されたそうですね。

A.

 特許法は、発明を推奨し、産業の発達に寄与することを目的に、知的財産の一つである発明の保護と利用にかかる制度を規定した法律です。平成28年4月1日に改正特許法が施行されました。企業が社内規定で定めれば、職務発明を特許にする権利は最初から会社のものにできるようになったのです。発明者や協力した技術者への報奨の選択肢も増やしました。昇格や留学、特別体暇、ストックオプションの付与等、経済的利益全般に広げられたのです。


◆職務発明とは

 会社に勤める従業者が会社の仕事として研究・開発した結果完成した発明を「職務発明」といいます。法律上は、「その性質上、当該使用者等の業務範囲に属し、かつ、その発明をするに至った行為が、その使用者等における従業者等の現在又は過去の職務に属する発明」をいうと定義づけられています(特許法35条l項)。つまり、勤務先の業務の範囲内に属し、かつ、職務遂行の結果として発明したものをいいます。
 この職務発明は、従業者自身の努力と才能によって産み出されたものといえますが、使用者である会社も、給与、設備、研究費などを従業者に提供することにより、発明の完成に一定の貢献をしていることも否定することはできません。


◆職務発明の帰属先

 職務発明について特許を受ける権利は、従業者なのか、あるいはその勤務先である使用者なのか、という議論があります。平成27年の特許法改正前までは、従業者帰属方式でした。
 ところが近年、共同研究等、一つの発明が企業を越えた複数人によって生み出される傾向があり、企業が特許を受ける権利を承継するには、他の企業の従業者等の同意が必要となるなど、手続が負担となっています。また発明者たる従業者が職務発明を自社に報告せずに第三者に特許を受ける権利を譲渡し、当該第三者が使用者より先に特許出願した場合には、現行制度では第三者が権利者になるなど、二重譲渡の問題が指摘されるようになってきました。
 そこで、改正法では、「従業者がした職務発明については、契約、勤務規則その他の定めにおいてあらかじめ使用者等に特許を受ける権利を取得させることを定めたときは、その特許を受ける権利は、その発生した時から当該使用者等に帰属する」(特許法35条3項)と規定しました。逆に、定めを設けない場合は現行法どおりとすることにしました。いわゆる併用方式を採用したのです。

◆相当の利益の供与

 特許を受ける権利を、最初から使用者等に帰属することとする場合、使用者は従業者に対して、「相当の金銭その他の経済上の利益(相当の利益)」を供与しなければなりません(特許法35条4項)。従来の「相当の対価」の文言を、企業戦略に応じて柔軟なインセティブ施策を講じることを可能とするとともに、発明者の利益を守るために、金銭に限定せず金銭以外の経済上の利益を与えることも含まれるようにするため、見直したものです。
 相当の利益の内容を決定するための基準の策定に際しては、経済産業省が公表する指針(ガイドライン)に沿って策定するよう留意することが必要です。

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