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労働実務Q&Aこれで解決!

仕事と介護の両立支援制度の見直し

Q.

 総務省の調査によると、家族の介護や看護をするために仕事を辞めたり、転職したりするいわゆる介護離職者は、年間10万人あまりにのぼるとか。転職すると収入は減るパターンが多く、仕事を辞めた人は新しい仕事を探すのも一苦労でしょう。無職の期間が長くなると将来受けとる年金も減ってしまいます。一方、企業にとってもベテラン社員を失うのは大きな痛手。今年の1月から法律が改正され、介護休業がとりやすくなったそうですね。

A.

 今年(平成29年)1月1日より、改正育児・介護休業法が施行されました。注目は介護休業。従来でも介護休業は取得可能でしたが、制度が硬直的で利用しづらい面がありました。今日では長く休んで大幅に働き方を変える仕組みよりも、なるべく通常どおり勤務しながら柔軟に対応できる方が離職防止につながるという知見が広まっています。そこで、介護休業は長期の1回より、分割取得の方がよいということになり、実体に即した休業ができるようになったのです。


◆仕事と介護の両立のための働き方の柔軟化

①介護休業の分割取得 これまで介護休業は、対象家族1人につき原則1回、93日取得できました。今回の改正で、最大3回まで分割取得が可能となったのです。親が倒れたときや、施設を探すとき、最期を看取るときなど、必要な時期に柔軟に体むことができます。
②介護休暇の取得単位 介護休暇については、対象家族の介護等を行う労働者が1年に5日まで休暇を取得できますが、半日単位の取得が可能となりました。たとえば、午前中はケアマネージャーとの打ち合わせで休み、午後から出社という柔軟な休み方が可能になるのです。
③介護のための時間短縮措置等 選択的措置義務(短時間勤務制度、フレックスタイム制度、時差出勤、介護サービス費用の助成)は、これまで介護休業期間と通算して93日でした。今回の改正で、介護休業の期間とは別に、利用開始から3年間の間で2回以上の利用が可能となり、日常的な介護ニーズに対応できるようになりました。
④介護のための残業免除 介護のための所定外労働(残業・休日労働)の免除の新設。労働者は対象家族1人につき、介護終了まで何回でも請求することができます。関心や危惧の念を抱く企業は少なくないのではないでしょうか。今や、親が年老いて介護が必要になるということを、想定外として済ませることはできなくなったのです。
⑤有期契約者の取得要件の緩和 法改正の趣旨を受けて、近年増加している有期契約労働者についても介護休業の取得要件が緩和されました。要件その1は、請求時に過去1年以上継続して雇用されていること。その2は、介護休業を取得する日から起算して93日を経過する日から6ヵ月を経過する日までの間に雇用契約が満了することが明らかでないこと。


◆介護の八ラスメント防止措置義務

 介護休業等を理由に会社が従業員に不利益な取扱いをすることは、従来から禁止されています。たとえば介護休暇取得者を本人の意思に反して配置転換するのは違法です。
 今回はさらに一歩踏み込み、上司や同僚に介護ハラスメントをさせない措置を講じるよう会社に義務づけました。具体的にはセクハラやマタハラと同じように、社内へ周知・啓発をしたり、相談窓口を設置する等の対策が必要です。


◆就業規則、労使協定の改定

 介護休業等の制度は、制度の導入だけでは足りず、就業規則に明記する必要があります(労基法89条、平成21年厚生労働省告示第509号)。改正法に則し、平成29年1月1日付で育児介護休業規程を整備しましょう。就業規則の服務規律と懲戒規定の手直しも必要です。
 このたびの法改正で労使協定の改定が必要となり得るのは、介護休暇について所定労働時間の2分の1以外の時間を半日とする場合と、介護のための所定外労働の免除の適用除外のケースです。

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