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労働実務Q&Aこれで解決!

うつ病と傷病手当金

Q.

 当社の社員がうつ病と診断されました。特に業務上の原因は見当たりません。今後、長期欠勤が予測され、場合によっては休職もせざるを得ないと想定できます。当社の就業規則によると、有給休暇の消化後は、欠勤に対し賃金を支払わないことになっています。妻子があり、生計維持が心配です。健康保険の傷病手当金の請求ができますか。傷病手当金を受給中の社員が、休職期間を満了し退職した場合にも、傷病手当金は支給されるのでしょうか。

A.

 傷病手当金とは、被保険者が保険事故である疾病または負傷により労務不能となり、給料を得られない場合に、その療養期間中の所得の保障を行う現金給付。連続して3日間会社を休み、4日目以降、休んだ日に傷病手当金が支給されます。傷病手当金を受給していた場合、退職後も引き続き傷病手当金を受給できます。筆者の事務所でも、最近、うつ病をはじめとするメンタルヘルス疾患による傷病手当金の請求事案が増加しており、労務管理の重要課題として浮上しているのを実感しているところです。


◆傷病手当金の支給要件

①療養のために労務に服することができないこと
 「療養」とは、健康保険法上の保険事故によるものであることをいい、業務上の傷病や美容のための整形手術を除きます。
 「労務不能」かどうかの判断は、必ずしも医学的な基準によるものではありません。その人が本来従事する業務について堪えられるかどうかで基本的に判断されます(昭15・1・31 社発83号)。
②労務不能の日が継続して3日間経過していること
 継続した3日間を「待期期間」といい、4日目から傷病手当金が支給されます。待期期間は、傷病により労務不能となった当日が起算日です。ただし、当日の業務が終了した後に保険事故が発生した場合は、その翌日から起算します(昭5・10・13 保発52号)。
 待期期間中、給料が支払われているか否かを問いません。欠勤開始の3日間が有給休暇で処理されていても、公休日が含まれていても、3日間連続すれば、待期は完成します。
③給料(報酬)の支払いがないこと
 傷病手当金は、療養期間中の生活保障を目的としています。したがって、私傷病の期間について、就業規則等により給料を受けられる場合は、傷病手当金は支給されません。ただし、給料の額が傷病手当金の額より少ないときは、その差額が支給されます。


◆支給金額と支給期間および受給手続

 傷病手当金の支給額は、従来、1日につき標準報酬日額の3分の2。平成28年4月から、不正受給防止等を目的に支給の基礎となる標準報酬の算定がやや見直されました。1日につき「直近12ヵ月の標準報酬月額の平均額の30分の1」の3分の2に変更されたのです。
 傷病手当金の支給期間は1年6ヵ月で、現実に支給を開始した日がその起算日となります。ここでいう1年6ヵ月とは、支給の実日数ではなく、暦の上での1年6ヵ月という意味です。ですから、いったん病状が回復し、復職して傷病手当金を給付されなかった期間(支給を中断した期間)も含まれます。
 受給手続は、「傷病手当金支給申請書」に、出勤簿、賃金台帳の写しと事業主の証明、および医師の意見(「労務不能」であるという医師の証明が重要)をつけて、保険者(「協会けんぽ」または健康保険組合)に提出します。


◆退職(資格喪失)後の給付

 社員が退職しても、傷病手当金を受給していた場合、引き続き傷病手当金を受給できます。これを「資格喪失後の給付」といいます。ただし、この給付を受けられるのは、資格を喪失する日の前日(退職日)までに継続して1年以上被保険者であった人のみ。
 支給金額、支給期間、受給手続きは、在職中の場合と同じです(事業主の証明は不要)。
 退職後も継続して健康保険に加入する「任意継続被保険者」の場合、傷病手当金は支給されません。

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