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労働実務Q&Aこれで解決!

レジリエンス

Q.

 誰もが体験する人生の不条理。病気、事故、犯罪、紛争、災害。これに加え、絶え間のない仕事のストレスや人間関係などによる心身の極度の疲労から、エネルギーが尽き果ててしまうというバーンアウト(燃え尽き症候群)に陥る人が多いとか。このような症状になると良好な人間関係を損い、組織の生産性の低下、高い離職率、有能な人材の流出など、企業にも悪影響を及ぼしかねません。何か、有効な手立てがありましたらご教示下さい。

A.

 今、レジリエンスという言葉が注目されています。レジリエンスとは心理学や精神医学の分野で以前から使われている言葉で、復元力とか元に戻る力を意味します。苦境に直面しても「折れない心」といってもいいでしょう。心身がよい状態でいると精神的復元力が高まり、次に身体的復元力も高まるというサイクルがあるそうです。まさに、心身一如。逆境に打ち勝つには、まずは「心のありよう」を見つめ直し、変えていく必要があるのです。


◆メンタル・タフネスの前提条件

 レジリエンスを含むメンタル・タフネス(心の頑強さ)を育むためには、3つの前提条件があります。
① 自立していること
 自立とは、人に頼らず、自分に頼ること。自分の心身を必要に応じて制御でき、自分の食い扶持は自分で稼ぐことです。人に依存しない自由な思考と自律的な生活。これこそ人間らしい生き方。自立に優る充実感、快楽、エネルギー源はありません。
② 鍛えることができるスキル
 心の強さは生まれもったものもあるでしようが、だれもが学習可能であり、後天的に鍛えることができるものです。スポーツの世界でも、肝心要のときに実力を最高度に発揮できる心づくりを行う訓練が常識となってきました。メンタルトレーニングと呼ばれています。ビジネスパースンにも応用でき、伸ばすことができる技術です。
③ 方法論は多様で個別的
 メンタル・タフネスを身につける方法論について、誰にも適用できる普遍的な一般論はない、と私は考えます。人間は個性的存在であり、その来歴、意識、好み、性格も違いますし、頭脳や身体的能力も異なるからです。人は自分で培ってきたやり方によってのみ、困難な時の自分を支えることができます。年月をかけ、体験的に自分なりに納得のいくエビデンス(証拠)を積みあげていくしかないのです。


◆レジリエンスを高める技法

 不屈の精神、しなやかで強靭な心とはどのような心でしょうか。私は「心の余裕」を持つことだと思います。苦難に遭遇したとき、立ち止まって自分を客観的に見ることができる余裕、学べるものがないか、糧になるものはないか気づく余裕、従来の考え方を思い切って変える余裕。心の器を大きくするのが最も手っ取り早い方法です(あくまで私的メソッドですが)。
 その1は、起きた出来事、与えられた運命、宿命を「受容」すること。諸行無常。自然も社会も人も変り続けるという真理を認めることです。どんな変化も当然のこととして受け入れられるようになれば、苦しみを乗り越え、心の安らぎを得ることができます。
 その2は、人生はおおむね苦難と挫折の連続であると「覚悟」すること。たとえ憲法が国民の基本的人権を保障してくれたとしても、生老病死の個人的問題まで面倒をみてくれるわけではありません。人生とは苦しみの連続であると覚悟する諦念の底からかすかに湧いてくる居直りのエネルギー。こころ萎えたときは、それに期待するしかないのです。
 その3は、逆境は「成長」の機会であると認識すること。「艱難汝を玉にす」という言葉があるように、苦労というものがあって初めて人間は磨かれます。苦難は自分を見つめ直し、成長させてくれるまたとないチャンスなのです。
 挫折をも妙に楽しむ心。試練の味をかみしめる心の余裕をもちたいものです。

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