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労働実務Q&Aこれで解決!

有期労働契約の不更新条項

Q.

 当社では、有期労働契約の従業員を契約社員、期間の定めのない契約の従業員を正社員と呼んでいます。1年契約を1回更新している契約社員のことで相談です。労務提供に特に問題はないのですが、雇止めしたいと思っています。更新時に、「次回は更新しない」旨の不更新条項を設けた場合、雇止め法理の適用を受けずに、契約期間満了と同時に雇用契約を終了させることができますか。従業員がこの条項を受諾し、署名押印した場合はどうなりますか。

A.

 労働者が有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的理由が認められる場合、雇止め法理が適用されます(労契法19条2号)。雇止め法理が適用されると、雇止めに合理的理由があり、社会通念上相当と認められない限り、雇用関係終了の効果が否定されます(労契法19条柱書)。そこで、更新時に使用者が「次回は更新しない」と一方的に通告した場合、いったん生じた更新の合理的期待を遮断させることができるか、この通告を労働者が受諾した場合はどうなるか、が法的論点です。


◆使用者が一方的に更新限度を明示した場合

 当初の有期契約締結時から更新限度が明示された場合には、その限度を超える雇用継続への合理的期待は、原則として否定されます。ただし、雇用継続を期待させるような使用者側の言動があった場合には、雇用継続への期待が発生する可能性があります。とりわけ労契法19条2号は、1号と異なり、反復更新を要件としていません。つまり、初回の不更新事例にも適用され得ることに注意が必要です。
 そこで、いったん雇用継続への合理的期待が生じていた状況において、使用者が不更新条項や更新限度を新設するなどの一方的措置をとった場合にどうなるか。
 裁判例の多数は、雇用継続への合理的期待が遮断・消滅したとはいえないとしています(報徳学園事件 神戸地尼崎支判平20・10・14)。施行通達も同旨です(平24・8・10基発0810第2号・第5・5(2)ウ)。


◆不更新条項を労働者が受諾した場合

 雇用継続への合理的期待が生じていた有期契約労働者が不更新条項を受諾した場合は難問です。
 不更新条項は、文字どおり次回は労働契約を更新しないことを合意するものですから、不更新条項の存在を前提として契約を締結した以上は、それまでの間に雇用継続の期待が生じていたとしても、当該契約の締結によって、生じていた期待は消滅する、と考えることもできるからです。したがって、「雇用契約のさらなる継続に対する期待利益を確定的に放棄したと認められる」事案においては、雇用継続への合理的期待は解消されたとする裁判例があります(本田技研工業事件 東京地判平24・2・17)。
 一方、労働者としては、受諾しなければ直ちに契約解消される可能性が高い以上、受諾せぎるを得ないという事情もあります。その合意が真意であるとは認められないケースもあるのです。その結果、「不本意ながら、不更新条項による労働契約の締結をせぎるを得ない状況にあった」と認められる事案では、解雇権濫用法理が類推適用されています(明石書店事件 東京地決平22・7・30)。

◆無期転換を避ける目的の更新上限特約

 今年(2018年)4月から、有期労働契約が反復更新され通算5年を超えると、申込みにより無期雇用へ転換できる制度が本格化します。
 すでに解雇権濫用法理が類推適用され得る有期契約社員について、労契法18条による無期転換を阻止する目的で、通算5年を越えては契約を更新しない旨の「更新上限特約」を設けて無期転換を防ぐことができるのかが問題です。
 このような特約は、法の潜脱を目的とする脱法行為と見られる可能性が高く、民法90条により無効とされます。そうなると同特約にもとづく契約終了の効果が否定され、無期転換を防ぐことはできません。

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