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労働実務Q&Aこれで解決!

国民皆保険

Q.

 マスコミ報道によると、今、高額な医薬品が問題となっています。その代表例が、免疫チェックポイント阻害剤と言われ、自身のがん細胞を攻撃する免疫機能を高める薬剤である「オプジーボ」。この薬の値段が、1年で約1700万円と高額であり、一部学者が年間1兆7500億円の医療費増につながると指摘。年間約9兆円の薬剤費を1つの薬が2割押し上げる計算が明かされました。わが国が誇る国民皆保険が崩壊していくのではないかが、議論されています。

A.

 日本では、すべての国民が何らかの医療保険に加入し、病気やケガをした際に「誰でも」「どこでも」「いつでも」診療を受けられる国民皆保険が確立。①医療の質、②医療へのアクセス、③医療のコストという医療制度を評価する3つの指標は、世界的にも高水準と言われています。わが国では、国が薬価を決定するシステムを採用。2017年2月には、オプジーボは50%引き下げられました。今年(2018年)4月の薬価改定でも、再び大幅に引き下げられることが決まっています。


◆国民皆保険の仕組み

 日本の医療保険制度の要点は以下のとおりです。まず、75歳未満の人については、被用者保険と国民健康保険の「二本建て」で構成され、75歳以上の人は、後期高齢者医療制度に加入。被用者保険の保険者(保険の運営主体)としては、大企業が加入する健康保険組合、中小企業が加入する全国健康保険協会(協会けんぽ)、公務員等が加入する各種共済組合などがあります。75歳未満であって被用者保険の対象ではない人は、住所地の市町村が運営する国民健康保険に加入します。
 国民すべてが何らかの公的な医療保険に加入する国民皆保険。勤め人とその家族はすでに被用者保険に加入しています。そこで、これらの公的な医療保険のどれにも加入していない人たちは、国民健康保険を「受け皿」にするというやり方で国民皆保険が成り立っているのです。ただし、法律上は、すべての国民を住所地の国民健康保険の対象としたうえで、被用者保険に加入する人や生活保護受給者等を「適用除外」するという構成がとられています(国民健康保険法5条、6条参照)。このような法的テクニックを駆使することにより、国民全員を漏れなくカバーすることができるのです。国民健康保険の存在は、国民皆保険の実効性を確保するうえで重要なカギを握っているのです。
 保険証1枚あれば、誰もが、いつでも、どこでも医者にかかれる国民皆保険制度は、1961年に達成され、その後10年余の成熟期間を経て、現在に至っています。


◆国民医療費の増加

 現在、日本では主に高齢化と高度で高額な医療技術の保険適用により、医療費が毎年増加していることが喫緊の課題です。日本人が病気やケガの治療のために医療機関にかかった費用の総額である「国民医療費」は、2015年度に41兆5000億円となり、前年度より1.5兆円増、率にして3.8%増になります。
 このうち、病院や診療所などの医療機関が行う医療サービスの値段は、「診療報酬点数表」により、国が全国一律に決めます。これとは別に、保険で支払う薬の値段表は「薬価基準」で示されます。また、世界で製造されているあらゆる薬が医療保険で使えるわけではなく、国が定めている薬価基準に収載されている薬品に限られています。
 国民皆保険の崩壊につながるという議論をどう捉えるか。日本では、国が強力に医療費をコントロールできる権限をもっています。つまり、財政的制約があることを前提に国民皆保険が成り立っていますので、保険適用拡大によって医薬品の売り上げが増大しても、皆保険を維持する範囲で薬価が決まります。普及すれば国が強制的に値下げすることができるのです。米国などとは大きな違いです。したがって、国民皆保険の維持は十分可能と考えます。

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