HOME >これで解決!労働実務Q&A>人事処遇システム>価値観の共有 サイトマップ
労働実務Q&Aこれで解決!

価値観の共有

Q.

 創業者の先代から事業承継し、社長を務めています。古参の社員が多いこともあって、先代の教えを守りながら自分の経営哲学も社員に正しく伝えたいと考えています。現在、創業者と社長の経営哲学の双方を調和させて、丁寧に明文化の作業を進行中です。そもそも、企業がもつべき価値観もしくは経営哲学とはどういうものか。価値観を経営トップから末端の社員まで共有することの意味。経営哲学を浸透させる効果的方法等を教えて下さい。

A.

 アメリカの社会学者であるセルズニックは、組織のリーダーの本質的な役割は、組織に価値観を注入することだと断言。価値観を注入されることによってはじめて組織がたんなる人の集まりや機能を工学的に集めたものでなくなり、息を吹き込まれた社会的な有機体になる、と言っています。価値観が組織を本当に生きた存在にするのです。つまり、経営哲学を確立し、経営者はもとより全社員で共有し、思いを一つにしてベクトルを合わせることが、大事なのです。


◆経営哲学・組織の価値観とは

 経営哲学とは、経営トップがもっているものの見方、考え方をいいます。狭義では、自分の会社経営をこうしたいという信念をいいますが、広義では、価値観や人生観を含みます。
 経営哲学もしくは組織の価値観を社員と共有しようと思えば、まずは成文化しなければなりません。その際の留意事項は次のとおり。
 その1は、普遍的な内容であること。多くの人が共感できる大義名分を平易にわかりやすく表現します。ひっきょう、道徳や倫理をベースとしたものにならざるを得ないでしょう。
 その2は、できるだけ体系的にまとめること。目的と手段の関係や相互作用を意識することです。幹と枝葉の区別です。当然、会社の目的や目標が上位概念になります。
 その3は、具体的事例を示すこと。具体的にどのような判断や行動が望ましいかを、自社のケースにあてはめて明確に示すことにより、イメージの共有が進みます。


◆価値観を共有する経営的効用

  1. 全社員が価値観を共有することにより、心のベクトルを揃え、組織の一体感を高め、目的に向かって大きな力を発揮します。
  2. 企業で直面する様々な諸課題に対し、全社員の意思決定の判断基準となり、行動の規範になります。たとえば、原点回帰のよすが、企業不祥事の歯止め、など。
  3. 組織で働く人々は理念的インセンティブを本来的に欲しています。人はパンのみにて生くるにあらず。共感できる価値観はモチベーションを高め、働きがいや生きがいを提供します。
  4. 組織の価値観はコミュニケーションのベースをつくり、社員間の意思疎通を円滑にしてくれます。同じ価値観で発し、受けとるからこそ、あるメッセージの意味が正確に伝わるのです。
  5. 色濃い企業文化が醸成されたとき、好ましい企業イメージや評判となり、人・物・金・技術に匹敵する経営資源にもなり得るのです。

◆経営哲学を浸透させる効果的方法

 3つのフェーズに分けて考えてみます。
 まずは、「採用」の段階。誰をチームに加えるかは、最重要事項。ミッション先にありき、です。人を活かす前に、価値観が共通する人を選びましょう。少なくとも最終選考は役員面接をもって臨みます。
 つぎは、「人事」制度の局面。経営哲学を「期待する社員像」に具現化し、職務基準書や人事評価制度に落としこみます。これらをツールにして評価や配置・賃金処遇を行います。
 そして、人材「育成」の場。経営トップ層からパート従業員に至るまでの全員を対象として教育訓練を実施します。フィロソフィーを恒常的に学習する仕組みが必要です。京セラは、「京セラフィロソフィー手帳」を策定。全78項目にわたって解説文が掲載されています。座学での研修の場だけでなく、朝礼や部門ミーティングなどで輪読や議論、コメントが交され、経営哲学の実践につなげています。

ページトップ