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労働実務Q&Aこれで解決!

成果を評価する働き方への第一歩

Q.

 政府が今国会の最重要法案と位置づけていた働き方改革関連法が6月29日に成立しました。罰則付き残業の上限規制、正規・非正規労働者の格差是正、高度プロフェッショナル制度の創設を3本柱とし、2019年4月から施行されます。人口が減少するなかで、一人ひとりの生産性を高めることが狙いとされています。私たちの働き方に大きな変化をもたらす今回の法改正。日本型の雇用慣行を見直す転機となるのでしょうか。

A.

 これまで日本の企業に多かった無駄な残業をなくし、非正規労働者の待遇を改善、時間ではなく成果を評価する働き方への第一歩ということができます。企業は欧米と比べて低い水準にとどまる生産性の向上に取り組まなければ、存続できなくなるのです。採用段階で残業時間や労働条件を重視する求人者も増加傾向。法改正は、国民の意識の変化を促します。労働者の権利意識の高揚により労務リスクが顕在化する可能性も。中小企業の生き残りを懸けた淘汰の時代を迎えたのです。


◆罰則付き残業の上限規制

 現行の労働基準法は、労働時間について「1週40時間・1日8時間」の法定労働時間が原則。ただし、労使が、労基法36条にもとづく協定を結び、労基署に届け出れば、「月45時間・年360時間」(厚生労働大臣の告示)まで残業が認められます。さらに「特別条項」付きの協定を結めば、上限規制をなくすこともできたのです。残業は事実上青天井でした。
 今回の労基法改正は、この仕組みを改め、これまで「目安」であった「限度基準」を法律による規制に格上げ。しかも特別条項について、次に掲げるいくつかの縛りをかけています。①時間外労働(休日労働は含まない)は最大年720時間以内、②時間外・休日労働(合計)月100時間未満、③2ヵ月ないし6ヵ月における期間の時間外・休日労働(合計)の平均は80時間以内、④時間外労働が月45時間を越える特別条項の適用は年6回以内、という制限があるのです。
 法改正後は、残業協定はこの枠内でしか結ぶことはできず、実際の労働時間が上限を超えた場合、使用者には罰則(6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金)が課せられます。
 大企業は2019年4月から、中小企業は2020年4月から適用。


◆正規・非正規労働者の格差是正

 雇用形態にかかわらず、同じ業務や成果には平等に賃金を支払うというのが「日本版同一労働同一賃金」法制。厳密な意味での同一労働同一賃金ではありません。
 非正社員の形態には、①パートタイム労働者、②有期雇用労働者、③派遣労働者の3つのタイプがあり、それぞれについて均等待遇(差別的取扱いの禁止)と均衡待遇(不合理な労働条件の禁止)が求められます。労働者が司法判断を求める際の根拠となる規定が整備されたのです。
 大企業は2020年4月から、中小企業は2021年4月から適用。
 ただし、6月1日に出たハマキョウレックス訴訟の最高裁判決に要注意。この判決は、16年12月に示した「同一労働同一賃金ガイドライン案」に沿った内容となっており、法律を先取りしているからです。


◆高度プロフェッショナル制度

 ホワイトカラーの仕事では時間と成果は比例しづらいのが現実。現状ではだらだらと時間を費やして働いた人の方が賃金が高くなりがちです。短時間で付加価値の高い仕事をする人に報いる必要があるのです。そこで、一部専門職で脱時間給の創設。
 この制度は、年収1075万円以上の金融ディーラーやコンサルタントなどの一部専門職を労働時間の規制から外し、成果で評価する仕組みです。残業代や休日手当は支給されません。
 短時間で効率よく働いた人に報いる賃金制度を確立する必要があります。ただし、業務も絞られ、対象は限定的。適用は2019年4月から。

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