HOME >これで解決!労働実務Q&A>労働時間・休日・休暇>使用者の年休時季指定義務サイトマップ
労働実務Q&Aこれで解決!

使用者の年休時季指定義務

Q.

 年次有給休暇(年休)は、労基法で「使用者は、雇い入れの日から起算して6カ月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続または分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない」(39条1項)と規定しています。年休は、休日のほかに毎年一定日数の休暇を有給で保障する制度。当社の就業規則にも同じ章で休日と休暇を定めています。休日と休暇は法的にどのような違いがありますか。働き方改革関連法で年休が改正されたとか。

A.

 休日は労働義務のない日です。これに対し休暇は、労働義務がある日に労働者の権利として労働義務から免れることのできる日です。前者が労働者の意思にかかわらず休まなければならない日であるのに対し、後者は労働者の選択により仕事を休むことができる日。休日と休暇は、賃金の問題と深くかかわり、労働法上は大きく意味あいが異なります。働き方改革関連法で、使用者の年休時季指定義務が創設され、5日の休暇取得が義務化されました。


◆休日と休暇の違い

 休日とは、労働者が労働契約において労働義務を負わない日をいいます。休日は、労基法により、原則毎週1日、4週4日以上を義務づけられています(35条1項、2項)。これが法定休日であり、これ以外に企業ごとに定めた法定外の休日があります。
 一方、休暇とは、労働者の労働義務がある日について、義務を免除する日をいいます。休暇にも法定(年次有給休暇など)と法定外(慶弔休暇など)があります。
 休日と休暇は、労働義務を負わない点で共通しています。しかし、①休日はもともと労働義務を負っていない日であるのに対し、休暇は労働義務のある日について労働者の申し出により労働義務を免除された日です。②休日労働には割増賃金が必要ですが、休暇に働かせても割増賃金の義務がありません。③休日の増加は所定労働時間の短縮になるので、割増賃金のもととなる1時間当たりの賃金単価が上昇します。しかし、休暇の増加は所定労働時間の変更にはなりません。


◆改正労基法による年休取得の義務化

 現行法の下では、年休の取得率が低迷しており、年休の取得がより確実に進むような仕組みを導入するごとになりました。
 すなわち、①使用者は、10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対して、年休のうち5日については、基準日から1年以内の期間に、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない(39条7項)。②ただし、労働者の時季指定または計画的付与制度により年休を付与した場合には、当該付与日数分については、使用者は時季指定により与えることを要しない(同条8項)というものです。
 施行日は、平成31年4月1日。猶予期間もありませんので、注意が必要です。
 改正法では、使用者が上記の規定にもとづき年休を与える場合は、あらかじめ、労働者に対して年休の取得時季に関する意見を聴取し、聴取した意見を尊重するように努めることを省令に定めることとしています。また、各労働者の取得状況を把握するため、使用者に「年休の管理簿」を作成することを義務づけることを同じく省令で定めることとしています。


◆年休付与と中小企業の対応

 年次有給休暇は、使用者サイドから見た場合、かなり厳しい制度。労働者の有給申請を基本的に拒むことができないからです。とりわけ、慢性的な人手不足に悩む中小企業では、たちまち操業度が低下し、相当な痛手を蒙ります。
 しかし、時代は変化。有給休暇を積極的に与えないと従業員は定着しません。求人広告では有給休暇の消化率をアピールする会社も出現。年休消化率100%でないと、求人広告に応募すらないという事態も。どのようにして休暇消化率を上げるか。中小企業につきつけられた経営課題です。

ページトップ