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労働実務Q&Aこれで解決!

有期雇用労働者の均等・均衡待遇

Q.

 現行法では、パートタイム労働者を適用対象とするパートタイム労働法に、均等・均衡待遇に関するルールや待遇に関する説明義務など、各種規定があります。一方、有期雇用労働者の待遇に関するルールについては、期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止を定める労働契約法20条の規定があるのみです。国会では今年(2018年)6月末、「雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保」を1つの大きな柱とする働き方改革関連法が成立しました。その内容を教えて下さい。

A.

 非正規労働者の不合理な待遇差の解消を目的とする今般の改正では、有期雇用労働者についても、パートタイム労働者と同様のルールを整備し、両者を併せて同じ法律の規制の下に置くこととされました。従来のパートタイム労働法は、有期雇用労働者も対象に含めた「パートタイム・有期雇用労働法」に改められることになり、無期雇用労働者と有期雇用労働者との間の「均衡待遇」を求める現行の労働契約法20条の内容は新法8条に取り込まれることになりました。


◆均衡待遇規定の明確化

 現行法には、いわゆる正社員である正規雇用労働者とパートタイム労働者・有期雇用労働者との待遇差について、①職務の内容、②職務内容・配置の変更範囲、③その他の事情を考慮して不合理であってはならないとするパートタイム労働法8条および労働契約法20条の規定があります。
 しかし、具体的な個々の待遇の違いを判断するうえで、これらの考慮要素では解釈の幅があるため必ずしも明確ではありません。不合理か否かの判断について予見可能性が高いとはいえない問題があるのです。そこで、「パートタイム・有期雇用労働法」では、個々の待遇ごとに、その待遇の性質・目的に照らして適切と認められる事情を考慮して判断されるべき旨を明確にしたうえ、不合理となる場合・ならない場合を具体的に示すガイドラインを法律の規定と一体となるものとして位置づけました。
 2016年12月20日に公表された「同一労働同一賃金ガイドライン案」は、正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者・パートタイム労働者、派遣労働者)の間で待遇差が存在する場合に、待遇差が不合理なものとなる場合、不合理でない場合を具体的に示しています。今般の改正法の成立により、ガイドライン策定の根拠規定が明確にされ、法案に関する国会審議の内容を踏まえて今後最終的に確定する予定です。


◆有期雇用労働者の均等待遇規定の整備

 先の「均衡待遇」は、①職務の内容、②転勤など配置の変更範囲、③その他の事情の3つの考慮要素を勘案してバランスの取れた処遇を求めるものです。これに対し、「均等待遇」は、基本的に処遇を同一(イコール)にすることを求める概念。現行のパートタイム労働法9条において、①職務の内容と、②転勤など配置の変更範囲が同じ場合は、「差別的取扱いをしてはならない」と禁止規定を定めています。
 注意が必要なのは、改正法9条が、従前からのパートタイム労働者に加え、有期雇用労働者についても適用されること。
 新法では、無期雇用労働者と有期雇用労働者との間で、①職務の内容と、②転勤など配置の変更範囲が同一である場合、「均衡待遇」の8条ではなく、「均等待遇」の9条が適用されるとして争われる可能性が高いのです。「均衡待遇」を検討する際は、長澤運輸訴訟で最高裁が重視した③の「その他の事情」を考慮することができますが、均等待遇を規定する9条には③の考慮要素がありません。
 つまり、企業側は、差別的取扱いを正当化する理由を厳格に主張、立証する責任を負うことになるのです。
 新法により法的紛争が増加するはず。正社員・非正社員を横断しての職務・能力・成果重視の賃金制度改革の契機と捉える必要があるのではないでしょうか。

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