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労働実務Q&Aこれで解決!

産業医の機能強化

Q.

 厚生労働省の2016年の調査によると、産業医の選任が義務づけられている従業員50人以上の事業所のうち、約14%は実際に選任されていない、としています。努力義務の50人未満の事業所でも選任しているのは5割に満たない、とか。当社は50人以上の事業所であり、産業医を選任しています。人手不足が深刻化するなか、企業が率先して社員の健康に投資することは企業価値を高めることにつながるはず。働き方改革関連法では産業医の機能が強化されたそうですね。

A.

 このたびの産業医や産業保健の機能強化は、昨年(2018年)6月に成立した働き方改革関連法に盛り込まれました。残業時間の上限規制などと同じく本年(2019年)4月から適用が始まります。柱は、長時間労働者の面接指導制度の拡充。医師の面接指導を受ける要件が引き下げられます。産業医の活動環境面の整備や情報提供のルールの整備も図られました。産業医から勧告を受けた事業者がその勧告内容を衛生委員会に報告する義務や長時間労働者の情報提供義務が定められています。


◆長時間労働者の面接指導制度の拡充

 産業医は、企業内で社員の健康管理について専門家として指導、助言する医師。労働安全衛生法等により従業員50人以上の事業所は産業医の選任が義務付けられており、50人未満は努力義務、1000人以上の場合は専属の産業医を置くことが求められています。
 今般の改正では、第1に、過労死等のリスクが高い状況にある労働者を見逃さないようにするため、産業医による面接指導や健康相談等が確実に実施されるようにし、企業における労働者の健康管理が強化されました。医師の面接指導を受ける要件が引き下げられます。現行制度では、1ヵ月の残業時間が100時間を超えた場合、本人が申し出れば医師からの面談を受けることになります。今回の法改正でこの要件は「月80時間超」に短縮(引き続き罰則はなし)。
 第2に、労働時間制度の改正にも関連して上限規制の適用を除外する代替措置としての医師による面接指導の実施。研究開発業務に従事する労働者については、1ヵ月当たりの時間外・休日労働が100時間を超えた場合。高度プロフェッショナル制度の適用を受ける労働者については1ヵ月当たりの健康管理時間(週40時間超)が100時間を超えた場合。いずれも労働者の申し出がなくても産業医等の面接指導を実施する義務があります(どちらも罰則付きの義務)。


◆産業医・産業保健機能の強化

 産業医の活動環境面の整備として、次のような見直しが行われました。
 その1は、産業医の勧告の衛生委員会への報告義務。産業医は、労働者の健康管理に関し事業者に勧告することができます。この勧告の趣旨を企業内で適切に共有し、勧告の実効性を確保するため、産業医から勧告を受けた事業者が、その勧告内容を衛生委員会に報告すべき義務が定められました。
 その2は、労働者が産業医等に直接相談できる環境の整備。労働者が産業医等に直接相談できる仕組みなど、労働者が安心して健康相談を受けられる体制の整備等に努める事業者の努力義務が明記されました。
 情報提供のルールについても整備が図られています。1つは、事業者の産業医に対する情報提供義務。情報提供の対象労働者の範囲の拡大。現行法では、1ヵ月当たり100時間を超えた労働者の氏名等となっていますが、改正法では、1ヵ月当たり80時間を超えた労働者の氏名等の報告義務が課されます。
 2つめは、労働者の健康情報の適正な取扱いについて。事業場内における健康情報の取扱いの適正化・明確化を図り、健康相談を促進するのが趣旨。健康情報の収集・保管・使用にあたっては、労働者の健康の確保に必要な範囲内でその情報を収集し、当該収集目的の範囲内で保管・使用しなければなりません。
 産業医の積極的活用が今後の課題です。

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