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労働実務Q&Aこれで解決!

勤務間インターバル

Q.

 脳・心臓疾患に係る労災認定基準においては、時間外労働が、「発症前1ヵ月間におおむね100時間」または「発症前2ヵ月間ないし6ヵ月間にわたって1ヵ月あたりおおむね80時間」を超える場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できるとされており、この基準はいわゆる「過労死ライン」と呼ばれています。勤務間インターバル制度は、過労死等の防止対策として有用な制度といわれ、働き方改革関連法で法律に明記されたと聞いていますが……。

A.

 労働時間等設定改善法2条1項が改正され、事業主は、その雇用する労働者の労働時間等の設定の改善を図るため……「健康及び福祉を確保するために必要な終業から始業までの時間の設定」……を講ずるように努めなければならない、とされました。一見しただけでは分りにくいですが、勤務間インターバル制度(前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定期間の休息時間を置く)の導入について、努力義務を新たに設けたものです。


◆勤務間インターバル制度とは

 勤務間インターバル制度とは、前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間以上の休息時間を設けることにより、労働者の生活時間と睡眠時間を確保する制度です。
 EU諸国では既に導入されており、1993年に制定された「EU労働時間指令」では、24時間につき最低連続11時間の休息がとれます。たとえば、所定勤務時間が9時~17時の企業において、23時まで残業した場合、その11時間後の翌日10時までは労働させてはならないということになります。
 労働者にとって休息時間を確保することは、実質労働時間の短縮につながり、過労死などの健康被害を回避することができます。
 企業サイドにとっても、労務改善により企業の魅力が高まり、長期安定雇用や生産性向上を期待することができるのです。


◆勤務闘インターバル制度の現状

 厚労省の「平成29年就労条件総合調査」によると、勤務間インターバル制度を「導入している」と回答した企業はわずか1.4%。「導入を予定または検討している」が5.1%、「導入の予定はなく、検討もしていない」が92.9%となっています。勤務間インターバル制度を導入していない理由については、「当該制度を知らなかったため」が40.2%と最多。次いで「超過勤務の機会が少なく、当該制度を導入する必要性を感じないため」が38.0%となっています。
 このように勤務間インターバル制度を導入している企業はほとんどなく、導入による対策が必要な企業は多数派とはいえません。ただ、制度自体知られていないという現状も。
 一方、過労死等が発生した事案では、徹夜勤務が続いたり、睡眠時間が2・3時間しかない等、過酷な勤務状況であったことが報告されています。したがって、勤務間インターバル制度の導入により休息時間や睡眠時間を確保することは、過労死等の防止対策として有効と考えられます。


◆勤務間インターバル制度の制度設計

 勤務間インターバル制度の具体的内容については、法令により定められていないため、労使で十分に話し合って、各社の実情に応じて検討することが求められます。
 導入の手続としては、就業規則または労使協定の定めが必要です。
 対象者の範囲をどうするか。管理監督者を含めたすべての労働者を対象とすべきでしよう。過重労働による健康障害の防止は、すべての労働者にあてはまる課題だからです。
 インターバルの時間をどの程度に設定するか。あまりにも短いと十分な休息がとれず、制度を設ける意味が半減します。企業内で実態調査を行ったうえで、合理的な時間を設定することが肝要です。EUの11時間は参考になります。
 ノーワーク・ノーペイの原則との関連で、短縮された労働時間の賃金をどう扱うか。賃金を支払わないとすることも可能ですが、労働者の反発が予想され、現実的ではありません。
 不測の事態への対応として、例外規定も必要です。

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