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労働実務Q&Aこれで解決!

新入社員に贈る言葉

Q.

 若年者の就業等に対する意識に関する内閣府の調査(2018年7月)があります。それによると、「安定していて長く続けられること」(88.8%)が最も多く、次いで「収入が多いこと」(88.7%)、「自分のやりたいことができること」(88.5%)の順。昔から変りばえしないのかなとは思うものの、このような就業意識を踏まえた企業の対応も求められます。この調査結果に対するコメントを含め、当社の新卒新入社員に贈る言葉をよろしくお願いします。

A.

 申し訳ありませんが、自分のやりたいことを仕事にし、満足できる高い報酬を働き始めたときから得られるというケースは稀有なこと。どんな大企業でも、倒産のリスクは常にあり、定年まで安心して働ける会社というのも皆無です。ここ数年は、我を忘れて仕事に没頭して下さい。目の前にある自分の仕事に愚直にとりくむことです。人として生まれて心から味わえる喜びや達成感、充実感は「仕事」の中にこそあるのです。以上、老婆心ながら。


◆自立の道をめざす

 社会人としてのスタート・ラインに立つ新入社員の皆さんに考えてほしいことは、真に人間らしい生き方とは何か、ということです。その観点から言うなら、自立した大人への道をめざしてほしい、とつくづく思います。
 自立とは何でしょう。辞書には、他の援助や支援を受けず、自分の力で判断したり、身を立てたりすること、とあります。要は、人に頼らず、己れに頼るのです。
 自立には、3つの局面があります。その1は、心理的自立。心の座標軸を未熟から成熟に置き、成熟度を増す大人をめざす。そして、心を適宜コントロールできること。その2は、肉体的自立。身体能力・免疫力を整えて身体を管理し、健康を保つこと。その3は、経済的自立。自分の食い扶持は自分で稼ぐこと。
 付言するなら、真に自立した人は、弱者をいじめたり、人を騙したりしません。
 自分を頼りにして生きることほど痛快なことはありません。頼れるような自分に成長してゆくことほど面白いことはありません。
 心の底から楽しめる生き方とは、自分の心身を必要に応じて制御でき、自ら見つけた目的や目標に向かってひたひたと迫ってゆくこと。これに優る快楽はないといってもいいくらいです。めざすは、自由な精神と創造性を発揮できる知的バーバリアン。


◆他者に優しくあれ

 「タフでなければ生きていけない。優しくなければ生きている資格がない」
 レイモンド・チャンドラーが、ある小説で探偵に言わせた有名な台詞です。人間は一人では生きてはいけません。ビジネスの世界にも相手がある。強いばかりが能ではなく、他人に対する優しさや思いやりを忘れてはいけないのです。
 新入社員の皆さんは、これまで両親や社会の様々な人たちのお世話になって生きてきました。これからは社会人になるのですから、今度は社会に対してお返しをしていく番です。「してもらう」側から、「してあげる」側へと立場を180度変える必要があるのです。
 これを利他といいます。「利他」の心とは、仏教でいう「他に善かれかし」という慈悲の心。キリスト教でいう愛のことです。「世のため、人のため」に尽くすということは「利他」の心にもとづく仕事観であり、日本に根づいた伝統的価値観でもあるのです。
 「情けは人のためならず」と言われるように、優しい思いやりに満ちた心や行動は、相手に善きことをもたらすのみならず、必ず自分に返ってくるものです。
 よりよい仕事をするためには、利己という自分だけのことを考えて判断するのではなく、まわりの人のことを考え、思いやりに満ちた「利他」の心を判断基準にすることです。
 人間としての究極の美質は「優しさ」です。

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