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労働実務Q&Aこれで解決!

同一労働同一賃金ガイドライン

Q.

 政府は、2018(平成30)年12月、同一労働同一賃金ガイドライン(正式名称は「短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針」平成30年12月28日厚生労働省告知第430号)を公表しました。この同一労働同一賃金ガイドラインでは、通常の労働者と非正規雇用労働者との間で、基本給や賞与、諸手当等の個別待遇において差が生じる場合の不合理性判断の基本的考え方が示されています。どう読めばいいでしょうか。

A.

 2016(平成28)年12月に政府が公表した「同一労働同一賃金ガイドライン案」をベースにし、新法であるパートタイム・有期雇用労働法(第15条第1項)を根拠規定として、「同一労働同一賃金ガイドライン」が決定公表されました。このガイドラインは、行政解釈であり、政省令などと異なり、国民を直接拘束するものではありません。ただし、ハマキョウレックス訴訟と長澤運輸訴訟の最高裁判決(最判平30・6・1)は、ガイドライン案に沿った内容。その後の裁判例にも強い影響力を発揮しています。


◆日本版「同一労働同一賃金」

 長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現を図る労働時間規制と並ぶ働き方改革の2本めの柱が、「同一労働同一賃金」です。諸説はあるものの、文字どおり解釈すると、「同じ仕事をする労働者には同じ賃金を保障すべし」という考え方。
 しかし、今回の働き方改革でいう「同一労働同一賃金」は、厳密に言えば、「正規・非正規労働者間の均等・均衡待遇の確保」と呼ぶべきもの。つまり、グローバル社会で用いられている基準とは異なり、日本版の「同一労働同一賃金」なのです。
 なぜなら、本来の同一労働同一賃金であれば、正規雇用労働者間や非正規雇用労働者間の賃金格差も問題となるはずですが、働き方改革で求められているのは、あくまでも正規雇用労働者と非正規雇用労働者の賃金格差や待遇差であるからです。
 ただし、このようなセンセーショナルな言葉を使わぎるを得ない特別な事情も理解すべき。少子高齢化が進む中での労働市場の変化と日本経済に与える影響です。今日、非正規雇用労働者は全労働人口の約4割を占める一方、その平均年収は約175万円とされています。このままでは個人消費は伸びず、日本経済に重大な支障をきたすのです。国力の維持・発展には、非正規雇用労働者の待遇を底上げし、雇用社会により参加しやすくなる労働環境を整備するしか手がないのです。


◆ガイドライン内容と狙い

 まずは基本給。①職業経験・能力に応じて、②業績・成果に応じて、③勤続年数に応じて支給するなど、それぞれの趣旨・性格に照らして、実態に違いがなければ同一の、違いがあれば違いに応じた支給をすることを要請しています。しかし、基本給は勘案要素が複雑で、不合理性の判断は容易ではありません。
 これに対して賞与。正社員全員に賞与を支払っている場合は、有期雇用労働者についても何らかの賞与を支払えとの記述があります。賞与の決定方法は複雑ですが、慣行に従って評価ぬきの一律支給をしている場合、有期雇用労働者への不支給は違法となります。
 ついで各種手当について。役職手当、特殊作業手当、精皆勤手当など職務に関連する手当を、同一の職務に従事している有期雇用労働者がいるにもかかわらず、正社員のみに支払うことは、不合理で違法と判断される可能性が高いでしょう。
 食事手当、通勤手当、単身赴任手当などの職務非関連の手当についても、正社員であれ有期労働者であれ趣旨は同じはずですから、厳しく判断されています。住宅手当や家族手当には言及していませんが、正社員のみ支払うことは不合理とする裁判例があります。
 ガイドラインは、「職務の内容や職務に必要な能力等の内容の明確化及びその公正な評価を実施し、それに基づく体系」の構築が望ましいとしています。能力・成果を重視した賃金制度の仕組みづくりや、賃金体系の変革に着手する必要があるのです。

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