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労働実務Q&Aこれで解決!

均衡・均等待遇規定への企業の対応

Q.

 均衡待遇は、就業の実施等に違いがあることを前提として、その違いに応じて待遇の違いがバランスのとれたものとなっていることを求める考え方。均等待遇は、働き方の前提条件が同じならば、同じ待遇にしなければならないという考え方、と聞いています。パート・有期労働法の施行日は、2020年の4月1日。中小企業はその翌年の2021年の4月から適用です。均衡・均等待遇規定に違反しないためには、どのような対応をすればよいでしょうか?

A.

 法の施行までまだ時間がある、と感じている事業主の方々が多いと思います。しかし、就業規則や賃金規程を見直すには、労・使の話し合いが必要であり、検討の時間も見ておかなければなりません。検討の結果、手当等の改善を図るために原資が必要となることもあり得ます。まずは現状を分析し、問題点や課題を洗い出し、整理しましょう。そのうえでいかなる対策が必要か検討します。ロジカルに問題解決を導くために、このような思考プロセスが欠かせないのです。


◆検討課題と取り組む手順

 新法であるパート・有期労働法は、同じ企業で働く正社員と短時間労働者・有期雇用労働者との間で、基本給や各種手当、さらには賞与等を含めたあらゆる待遇について、不合理な差を設けることを禁止しています(8条、9条)。
 事業主は、短時間労働者・有期雇用労働者から、正社員との待遇の違いやその理由などについて説明を求められた場合は、説明をしなければなりません(14条2項)。
 取り組む手順としては、現状を分析・整理したうえで課題を抽出します。そのうえで、いかなる対策が必要となるか検討することになります(いきなり対策の立案はあり得ないのです)。
 手順その1は、正社員と各種待遇について、取扱いの違いがあるかどうかの確認です。短時間労働者・有期雇用労働者について、待遇が同じ社員タイプごとに区分して、人数や処遇を書き出して、洗い出しを行います。
 手順その2は、待遇に違いがある場合、違いを設けている理由を確認します。正社員と有期労働者では働き方や役割が異なり、待遇が異なることは十分あり得るのです。
 手順その3は、待遇に違いがあった場合、その違いが「不合理でない」ことを説明できるよう検討を加えることです。手順1と2は、分析・整理のフェーズであり、手順3は、対策のフェーズです。説明することが困難であると判断したなら、実状を変更、是正するほかありません。


◆基本給、各種手当、賞与の説明内容の検討

 待遇の違いが「不合理でない」ことをいかに説明するか、は容易ではありません。不合理か不合理でないかを最終的に判断するのは裁判所です。ただし、手がかりはあります。「同一労働同一賃金ガイドライン」(指針)とハマキョウレックス訴訟と長澤運輸訴訟の最高裁判決(最判平30・6・1)です。
① 基本給 正社員と有期社員とでは、職務の内容(業務内容と責任の程度)、人材活用の仕組みと運用(転勤、配置転換)に違いがあり、基本給に勘案される要素が異なるため、違いが「不合理でない」ことの説明は可能。
② 通勤手当 通勤に要する交通費を補填するのが趣旨。労働契約に期間の定めがあるか否かによって、通勤に要する費用は異ならないため、説明は困難。有期社員にも支給する方向で検討。
③ 精皆勤手当 皆勤を奨励し、出勤する者を確保することの必要性については職務の内容によって差異はない。支給なしとする説明は困難。
④ 家族手当 長期間にわたり勤務していく中での家族構成の変化と限られた期間での家族構成の変化に多寡があり、説明は可能と思われる。
⑤ 住宅手当 正社員にのみ転勤を伴う配置転換があり、有期社員に異動がなければ説明は可能。実際に異動がない場合、説明は困難。
⑥ 賞与 賞与は会社業績への貢献、功労報酬、生活費の補助、長期間勤務への期待など多様な趣旨が含まれており、ある程度の説明は可能です。ただし、非常に苦しい。

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