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給与明細書の見方

Q.

 今年の4月から社会人となった新卒の新入社員です。給与明細書を見て驚いたのは控除金額の多いこと。社会保険料や税金等で2割ばかり引かれ、手取り金額は8割程度です。毎月確認するのは差引支給金額のみという有様。ただし、残業代は割増しで計算してあるようですし、毎月決まった支給日には自分の銀行口座に振り込んであるので、有難いという気持ちもあります。自分が働いて稼いだお金がどう計算されているか。給与明細書の見方を教えてください。

A.

 会社が各従業員の給与の総支給額を計算して、社会保険料や税金を徴収する業務を給与計算といいます。会社は、法律にもとづき、国の業務を代行するという重要な役割を担っているのです。給与明細書には大きくわけて、①勤怠項目(出勤日数、労働時間、残業時間等)、②支給項目(基本給、各種手当等)、③控除項目(社会保険料、所得税、住民税等)、④差引支給額となっています。総支給額から控除額を差し引いた額が手取り額で、この金額が振込み金額です。


◆勤怠項目・支給項目

 勤怠項目には、出勤日数、欠勤日数、残業時間、有給利用日数などの実績の時間や日数が表示されます。会社は、全従業員について、賃金台帳を備えつけ、給与情報を記録しなければなりません(労基法108条)。給与明細書に表示される内容は、ほぼ同じものです。
 給与の支給項目は、基本給から各種手当まで、「契約自由の原則」(民法709条)にもとづき、会社で自由に取り決めることができます。通常、就業規則や賃金規程に定められています(労基法89条2号)。自分の会社の給与体系、基本給や各種手当の趣旨・内容・金額等を知るには賃金規程をよく読んでみることです。
 労基法では、原則として1日8時間、1週40時間を超えて労働させることができないとされています(32条)。この法定労働時間を超えて働かせた場合は割増賃金を支払う必要があります。割増賃金が必要な場合と割増率は、次の3つのケースです。時間外労働(25%以上)、法定休日労働(35%以上)、深夜労働(25%以上)。割増賃金の計算方法について法は詳細で厳格に定めています(労基法37条、則19、21条)。法律の規定に満たない割増賃金は、賃金の未払いとなるので、会社は注意が必要です。
 通勤手当を支給する場合、他の諸手当と異なり、一定額(上限は月額15万円)までは非課税となります。


◆控除項目・差引支給額

 控除項目には、法律により控除しなければならないものと、労使協定にもとづき控除されるものの2つがあります。控除を認めた法令には、社会保険料の控除を認める健康保険法167条、厚生年金保険法84条、労働保険の保険料の徴収等に関する法律31条などの規定があり、税金については給与所得に対する所得税等の源泉徴収を認める所得税法183条および地方税法321条の5があります。
 労使協定による控除の例としては、財形貯蓄や会社の寮費等をあげることができます。
 社会保険は、病気やけが、障害、死亡などの不測の事態や老後の生活に備えて、国民のすべてがお互いを助け合うという意味で設けられている国の公的保険です。会社が加入する社会保険(広義)には、健康保険、厚生年金保険、介護保険(40歳以上の従業員が被保険者となる)、雇用保険、労災保険(全額会社負担)があります。狭義では、健康保険、厚生年金保険、介護保険をさし、雇用保険、労災保険は労働保険と呼ばれています。
 それぞれの保険料は、原則として、毎月支払う給与から控除し、会社負担分を含めて各官公署等へ納付することになります。
 所得税と住民税については、給与の支払者である会社が、支払いの際に所得税等を控除してまとめて申告納付する源泉徴収制度がとられています。実際の税額は、12月の年末調整で確定します。給与の支給や控除は、様々な法律によりガードされているのです。

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