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労働実務Q&Aこれで解決!

パワハラ防止の法制化

Q.

 厚労省は、18年度に都道府県労働局などに寄せられた、労働者と企業との間の争いをめぐる相談件数を公表。「いじめ・嫌がらせ」に関する「民事上の個別労働紛争の相談件数」は8万2,797件で前年度より14.9%増、「助言指導の申出件数」は2,599件で同15.6%増、「あっせんの申請件数」は1,808件で同18.2%増といずれも過去最高の件数となっています。パワハラ対策はもはや喫緊の課題。これらの経緯からパワハラ防止が法制化されたそうですね。

A.

 2019年5月29日、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律」が成立し、その中に盛り込まれた労働施策総合推進法により、事業主に対してパワーハラスメント防止のための措置義務が課せられることになりました。法律上の定義が今回初めて定められ、パワハラ防止のための相談体制の整備や再発防止措置、相談などに対する不利益取扱いの禁止などが義務づけられます。大企業では2020年4月から、中小企業では2022年4月から施行される見通し。

◆パワハラの法律上の定義

 パワーハラスメントについては、「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されること」(労働施策総合推進法30条の2第1項)という法的定義が今回初めて置かれました。次の3つが要件です。
① 優越的な関係を背景としていること
 「職場のパワーハラスメント防止対策に関する検討会報告書」では、パワハラを受ける労働者が行為者に対して抵抗または拒絶することができない蓋然性が高い関係に基づいて行われることをいうとされています。
② 業務上の適正な範囲を超えていること
 社会通念に照らし、当該行為が明らかに業務上の必要性がないか、またはその態様が相当でないものであることをいいます。
③ 労働者の就業環境を害すること
 当該行為を受けた者が身体的もしくは精神的に圧力を加えられ負担と感じること、または当該行為により当該行為を受けた者の職場環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等、当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることをいいます。
 どのような行為がパワーハラスメントにあたるかの判断は容易ではなく、今後、厚労省から「指針」が公表される予定です。


◆パワハラ防止措置義務

 パワハラ防止対策の法制化により、パワハラ防止のために、雇用管理上必要な措置を講じることが事業主の義務となりました。具体的には、事業主によるパワハラ防止の社内方針の明確化と周知・啓発、苦情などに対する相談体制の整備、被害を受けた労働者へのケアや再発防止などの措置をとることが想定されています。厳密には、今回の法律をもとにした「指針」で定められますが、セクハラ等に関して求められる防止措置と基本的には同じ内容となると思われます。
 また、パワハラの相談を行ったことや、パワハラの調査に対し事実を述べるなど相談対応に協力したことを理由とする解雇その他の不利益取扱いが明文で禁止されました(30条の2第2項)。
 さらに、パワハラの紛争に対する都道府県労働局長の助言・指導・勧告(30条の4、5)、紛争調整委員会に調停を行わせうること(30条の6、7)なども定められています。


◆パワハラ問題の困難性

 パワハラ対策を考える場合難しいのは、わが国では解雇規制が厳しく、判例により、解雇する前に労働者に対する指導教育や改善努力が求められていることです。上司としては、いくら注意しても是正されない部下に対しての指導は厳しくなるでしようし、それを受ける部下にとっては、いじめと受けとめられるケースもあり得るのです。ここにセクハラ問題と違う困難さがあります。

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