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労働実務Q&Aこれで解決!

賃金・人事制度の運用

Q.

 「働き方改革」の背景にあるのは、急速に進展する少子高齢化。その対応策の柱となるのが、長時間労働の是正、非正規従業員の処遇改善、そして労働生産性の向上です。労働生産性と深いかかわりがあるのが企業の賃金・人事制度。とりわけ中小企業における賃金・人事制度改革は余り進んでいないという印象があります。経営者にとって組織の問題は重いテーマであり、取り組み辛い課題であるのも確か。よい方法があれば教えて下さい。

A.

 中小企業で賃金・人事制度改革が進まない理由はいろいろあると思います。制度の中核となる人事評価制度は、その企業に合った制度の構築が難しく、制度の運用も煩雑に感じます。評価を適正に行なえる管理者が少ないことが原因で、行き詰まるパターンが多いようです。人事評価を含めたあらゆる人事制度は手段であり、目的ではありません。制度の運用を通じて企業の成長・発展を図るのが目的です。最初から完璧をめざすのではなく、間題が発生したら、その都度修正していけばよいのです。


◆会社の成長・発展につながる仕組みづくり

 従業員の心のベクトルを揃えるために、経営トップは経営理念を策定し、成文化します。
 経営理念は「期待する人材像」に具現化し、職務基準書や人事評価制度に落としこみます。具体的には、「期待する行動指標」「求められる知識・技能」「好ましい意欲・態度」「成果に結びつく行動特性」等の項目や評価要素にちりばめます。つまり、会社が期待する職務レベルや行動基準、自社独自のモノサシをあらかじめ従業員に呈示し、それに基づいて評価や処遇を行います。
 職務基準書と人事評価制度は人材の成長を継続的に支援していくツールであり、それを運用するプロセスで会社が求める人材づくりを行うことができるのです。
 まずは従業員が成長し、生産性が向上することにより会社の業績が伸び、結果として従業員の給料や賞与を増やしていくという好循環経営を実現することができます。


◆制度の運用を通じて好循環メカニズムを創出

 経営理念を職務基準書や人事評価制度に落としこみ、反映させるのはなぜか。それは、会社が従業員に対し、業績を上げるためには何が重要で、常日頃どんな行動をとってほしいのかを、会社のメッセージとして伝えるため。
 職務基準書は、職種ごとグレードごとに、職務要件、能力要件、意欲・態度要件を詳細に記述したものです。日常の実体験を通じて、従業員に“気づき”と改良・改善の機会を提供します。最近ではコンピテンシーモデルを活用して、成果に結びつく行動特性として具体的に呈示できるようになりました。優れた社員のやり方を事前に可視化することができるのです。
 人事評価は、従業員1人ひとりの仕事ぶりを把握し、あるべき達成水準と現状の職務行動とのギャップを測定。育成ニーズを明らかにして、会社の教育・研修体系に活用します。肝心なことは、リーダーによる部下の指導・育成のウェイトを大きくし、人を育てることが高く評価されねばならないということです。全従業員がお互いに成長しあつていくという企業文化を醸成しなければなりません。


◆計数管理による生産性向上対策

 賃金の支払い能力を見る指標は、労働生産性です。従業員1人当たりの付加価値額をいいます。厳密には「人時(にんじ)生産性」という指標を使います。従業員1人が1時間にどれくらいの粗利を稼ぐかを示す生産性指標です。中小企業はこの数値が低いのです。効率よく稼ぐ力をつけることにより賃金を着実にアップすることができます。
 ついで労働分配率。労働分配率とは、付加価値額に占める人件費の割合です。労働分配率の低い企業の方が成長・発展のスパイラルの循環に乗れる傾向があり、これが高い企業は、逆に衰退への道をたどる傾向があります。社員が成長して会社の業績が伸びて労働分配率が下がると、従業員の給料も無理なく増やしていくことができるのです。

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