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労働実務Q&Aこれで解決!

試用期間の延長

Q.

 当社の就業規則では、試用期間を3ヵ月と定めています。しかしこれまでの経験から、3ヵ月では自信をもって本採用を決定するのは困難です。6ヵ月または1年の試用期間を定めることは可能ですか。あらかじめ定めた試用期間では、本人の適性・能力等を判断できなかった場合、労使の個別の合意により試用期間を延長することができますか。それとも就業規則に試用期間の延長規定を置く必要がありますか。その場合に延長期間、延長事由が必要ですか。

A.

 試用期間の長さについては、法律上の規制がないため、各会社の判断に委ねられています。法律上は、6ヵ月とすることも1年とすることも可能です。ただし、試用期間の趣旨・日的から判断してその期間が妥当かどうかは別問題です。試用期間を原則3ヵ月(実際も3ヵ月と定める企業が多い)とし、延長も可とするのがおすすめです。その場合、労使の個別の合意ではなく、延長規定を置くことが必要です。延長期間は必須ですが、延長事由はあらかじめ限定しなくてもよいと考えます。


◆試用期間の長さと延長の可否

 試用期間の長さについて、法律上の規制はありません。したがって、6ヵ月または1年の試用期間も法律上は可能と考えられます。ただし、合理的な理由なくあまりに長期の試用期間は、公序良俗(民法90条)違反とされるでしょう。
 6ヵ月ないし1年の試用期間が妥当かどうかは再考の余地があります。というのは、試用期間の法的性格は、使用者の解約権が留保された労働契約と解されており、試用期間中、労働者は不安定な地位に留め置かれることになるからです。一方、日本の解雇規制は非常に厳格であり、一度本採用されると解雇は困難です。試用期間中の解雇の有効性は、正社員の場合の解雇と比べて若干緩やかに判断されています。
 このようなことを考慮すると、試用期間は3ヵ月とし、通算して6ヵ月の試用期間の延長をすることができるとするのがベターだと考えます。原則3ヵ月とし、事情に応じて延長可、としたほうが柔軟に対応できるのではないでしょうか。
 この場合、就業規則の根拠がなくても、労使の個別の合意により延長が可能でしょうか。真摯な合意があれば延長できるとする見解もあります。しかし、労契法12条は、就業規則で定める基準に達しない労働契約を無効としています。この条項に抵触する可能性大です。
 したがって、根拠となるべき延長規定を就業規則に明記すべきです。なお、延長期間についても、当初の試用期間と延長期間を合算して1年を超えるような延長は許されないと考えるのが無難でしよう。
 延長の事由についても、明確にしたほうが望ましいのかもしれませんが、広く本人の適格性を判断する趣旨からは当初から限定しないほうが有用と考えます。ただし、その都度延長する場合においても、合理的理由が必要であることはもちろんです。


◆有期労働契約と試用期間法理

 試用期間については、試用目的で設定された「期間」をどう解釈するかという問題があります。学校の非常勤講師を採用する際、まず1年という期間の定めのある労働契約を締結。その期間中に教員としての適格性を観察して、正規の教員としての採用の可否を決定するというケースが多いのです。
 1年の期間満了後に雇用を打ち切られた場合に、その1年の期間が期間の定めのある労働契約の期間なのか、それとも試用期間の期間なのかが問題となるのです。前者だとすれば、その期間満了により契約関係は当然終了し、後者だとすれば、解約権留保付労働契約に類するものとして客観的に合理的理由がない限り正規の無期労働契約に移行するものと解されます。
 このような事案において、最高裁は、「契約の存続期間ではなく、試用期間と解するのが相当である」と判示しています(神戸弘陵学園事件 最判平2.6.5)。

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