HOME >これで解決!労働実務Q&A>労働条件の引き下げ>雇用調整 サイトマップ
労働実務Q&Aこれで解決!

雇用調整

Q.

 当社は、自動車メーカーが発注する自動車部品の加工、組み立て等の請負事業を営んでいます。このたびの新型コロナ禍により、メーカー側は当初は中国部品の供給が滞るサプライチェーンの寸断を理由として減産を実施。現在では、海外および国内需要の激減を理由として生産調整を行っています。そのため、当社の受注量も急激に減少しており、操業短縮をし、従業員を休業させています。これまでの様々な危機に対して、わが国の企業がとってきたリストラ策を教えてください。

A.

 リストラ=リストラクチャリングの本来の意味は、事業の再構築です。すなわち、収益構造の改善を図るために、現在の製品構成などを見直し、新事業・新分野への参入、既存事業の合理化と拡充などの手段により、事業を再構築することです。ただ現在では、雇用面での再編、再構築の趣旨で、雇用調整などと同義に使われる場合も少なくないようです。雇用調整には、人員整理や整理解雇だけでなく、解雇に至らない諸々の措置を含む多様な形態があります。


◆雇用調整のパターン

 いつの時代でも、企業の合理化が課題になると、人件費の抑制と雇用の削減が俎上にのぼります。いわゆる雇用調整といわれるものがそれです。 わが国の雇用調整は、独特のパターン(手順)をもっています。つまり、長期継続雇用の慣行を確保する意味で、穏やかで消極的なものから、随時、強力で積極的なものに移行していくということです。
 まずは、残業規制。所定外労働時間が多いわが国では、簡便な手段といえます。ついで、中途採用の停止、臨時社員やパートタイマーの雇止め(契約不更新)、新規採用の削減、停止などの措置がとられ、自然減を待ちます。そして減産対策としての休業の実施。以上は、労働者数や労働時間を削減する「量」の調整です。
 加えて、配転、出向、転籍など、人事異動による「質」的調整も試みられます。
 さらに、一時帰休(操業の一時停止)、希望退職の募集と進み、最後の手段として整理解雇が登場するというパターンです。
 ただし、中小企業では様相は一転。配転や出向などは受け皿が乏しく行い難く、賃金保障が不可欠な一時帰休なども行う余裕がありません。希望退職の募集や解雇が即刻行われます。いきなり倒産や全員解雇に至るケースもめずらしくないのです。


◆整理解雇法理と雇用政策

 解雇は最終的手段。というのが企業の施策。同時に、わが国では解雇を抑制する規範が判例により形成されており、実務と法理論が見事に符合します。
 整理解雇とは、企業の存続のために、企業内の余剰人員を削減するための解雇をいいます。普通解雇や懲戒解雇と異なり、労働者側に帰責事由がないため、「解雇権濫用法理」(労契法16条)をさらに精緻化させた「整理解雇の4要件」が判例で確立しています。①人員削減の必要性、②解雇回避努力義務、③被解雇者選定の妥当性、④協議・説明義務の4つの要件です。1つひとつが厳しく判断され、会社側が勝訴するのはごく一部にとどまっているのが実情です。
 新型コロナウイルスの感染拡大を受けた政府の緊急経済対策で、マスコミ等により「雇用調整助成金」を耳にする機会が増えました。
 景気が悪化したとき企業は雇用を維持するため労働者を休業させることがあります。この場合は休業期間に応じて労働者に平均賃金の60%以上の休業手当を支払う必要があります(労基法26条)。休業期間が長びくと手当の支給が困難となり、労働者を解雇したり雇止めをする企業が相次ぐことになりかねません。それを防ぐために国が雇用保険を活用し、休業手当額の一定割合を企業に助成するのが雇用調整助成金です。新型コロナにより様々な特例措置が拡充され、今、とても申請しやすくなっています。

ページトップ