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労働実務Q&Aこれで解決!

新型コロナウイルスと労災補償

Q.

 負傷と疾病のいずれについても、それが業務上のものであると認められれば労災保険による保険給付の対象となります。しかし、「疾病」の場合は、「負傷」と異なり、業務により生じたものであるかどうかの判断が困難です。負傷は、転落、打撲、爆発といったその原因となる災害的出来事に媒介されて発生するのが通例であるのに対し、疾病はそのような媒介を要せず発症するからです。このたびの新型コロナウイルスは、どのような場合に労災認定されますか。

A.

 長時間にわたり業務に伴う有害作用が蓄積して発病に至る疾病である「職業性疾病」の場合、被災労働者が業務起因性を立証することは極めて困難です。そこで、法は、あらかじめ業務上の疾病を分類列挙し、これに該当するものについては、業務との因果関係を推定し、反証のない限り業務上として取り扱うこととしています(労基法75条2項、施行規則35条、別表1の2)。新型コロナウイルスに関し認定基準はありませんが、厚労省は取り扱いの考え方を示しています。


◆新型コロナウイルスの労災補償の考え方

 新型コロナウイルス感染症の労災補償について、厚労省は本年4月28日付けで、労働基準局補償課長発の通達「基補発0428第1号」を都道府県労働基準部長あてに発出しました。 それによると、新型コロナウイルス感染症については、「従来からの業務起因性の考え方に基づき、労働基準法施行規則別表第1の2第6号1又は5に該当するものについて、労災保険給付の対象となる」としています。
 その1は、「細菌、ウイルス等の病原体による疾病」であって、「患者の診療若しくは看護の業務又は研究その他の目的で病原体を取り扱う業務による伝染性疾患」(第6号1)。
 その2は、「これらの疾病に付随する疾病その他細菌、ウイルス等の病原体にさらされる業務に起因することの明らかな疾病」(第6号5)です。
 とりわけ後者の医療従事者等以外への労働者への運用について、次のように言及しています。業務上外の労災認定の判断に際しては「本感染症の現時点における感染状況と、症状がなくとも感染を拡大させるリスクがある」ことの特性から、「調査により感染経路が特定されなくとも、業務により感染した蓋然性が高く、業務に起因したものと認められる場合」には、「労災保険給付の対象とする」としています。ちなみに、蓋然性が高いとは、感染する確率が高いということです。


◆労災認定にあたっての具体的な取り扱い

① 患者の診療もしくは看護の業務または介護の業務等に従事する医師、看護師、介護従事者等(医療従事者等)が新型コロナウイルスに感染した場合には、業務外で感染したことが明らかである場合を除き、原則として労災保険給付の対象となります。
② 医療従事者等以外の労働者であって、感染経路が特定され、感染源が業務に内在していたことが明らかに認められる場合は、もちろん、労災保険給付の対象となります。
③ 医療従事者等以外の労働者であって② に該当しない場合であっても、感染リスクが相対的に高いと考えられる(ア)請求人を含め複数の感染者が確認された労働環境下での業務(イ)顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下での業務。以上のような労働環境下で感染したときは、「業務により感染した蓋然性が高く」、個々の事案ごとに医学専門家の意見も踏まえて業務に起因したものと認められるか否かを判断します。
(ア)については、施設利用者で請求人を含め2人以上が感染している場合を、(イ)については、小売業の販売業務、バス・タクシー等の運送業務、育児サービス業務等が想定されています。
 なお、従業員が新型コロナウイルス感染症に罹患して休業した場合には、事業者は、遅滞なく、所轄労働基準監督署長に労働者死傷病報告を提出しなければなりません(労働安全衛生法100条、労働安全衛生規則197条)。

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