ネガティブ・ケイパビリティ
Q.
わが郷土の俳人、山頭火の作品に、「分け入っても分け入っても青い山」という句があります。まるで新型コロナウイルス禍に見舞われた今日の世界を表象しているかのよう。何が正しいのか。いつまで続くのかもわからない。解決するすべが見えてこない。労働者の働き方も、在宅勤務やテレワーク、あるいはオンライン会議等と変わってきました。終戦以来のパラダイムシフトが起きるという人もいます。価値観の変容を迫られているのでしょうか。 |
A. 人間の一生というのはつらいことの連続です。私が今注目しているのが、『ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力』(朝日選書)という本。著者は、小説家であり、臨床40年の精神科医でもある帚木蓬生さんです。これまで正面から論じられることのなかった概念について、医療、芸術、文学、教育など多面的な角度から論じています。人間がもつべきいくつかの徳目とも深く結びついており、その秘められたパワーについて紹介してみましょう。 |
◆ネガティブ・ケイパビリティとは ネガティブ・ケイパビリティ(negative capability)とは、直訳すれば負の能力。「どうにも答えの出ない、どうにも対処しようのない事態に耐える能力」をいいます。 ◆共感を育み寛容を支える概念 ネガティブ・ケイパビリティの驚くべき特長は、ものの道理、人生で大切な人間としての徳目と親和性が高いことです。 ◆ネガティブ・ケイパビリティの底力 私たちの人生や社会は、そう簡単には解決できない問題に満ちあふれています。人が生きていくうえでは、解決できる問題よりも解決できない問題のほうが、何倍も多いのです。 |