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労働実務Q&Aこれで解決!

減給処分

Q.

 マスコミ報道によると、総務省と農林水産省の幹部職員が、利害関係者から接待を受けた問題で、それぞれ11人と6人が処分を受けました。いずれも国家公務員倫理法に基づく国家公務員倫理規程違反。その中で最も重い処分が、3ヵ月、10分の2の減給でした。公務員においても、懲戒処分は昇任や昇給、賞与時における勤務成績に影響を及ぼすようです。民間企業においても、懲戒処分としての減給に対し、法律上の制限がありますか。

A.

 国家公務員の懲戒処分は、免職・停職・減給・戒告の4種類があります(国家公務員法82条)。また減給は、「1年以下の期間、俸給の月額の5分の1以下に相当する額を、給与から減ずるものとする」(人事院規則12-03条)とされています。つまり、最大1年間、毎月20%まで減額が可能です。これに対し民間企業では、減給について、労基法91条で「1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が1賃金支払期における賃金総額の10分の1を超えてはならない」と定めています。


◆懲戒処分としての減給

 民間企業が労働者に懲戒処分として減給を科す場合には、あらかじめ就業規則にその内容、手続き等を定め(労基法89条)、その就業規則を労働者に周知させておかなければなりません(労基法106条)。さらに、その減給は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が1賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならないのです(労基法91条)。
 「減給」とは、職場規律に違反した労働者に対する制裁として、本来ならばその労働者が受けるべき賃金の中から一定額を差し引くことをいいます。減給の額があまりに多額ですと労働者の生活を脅かすことになるおそれがありますので、減給の額について一定の制限を加えているのです。
 減給の額は、1回の違反行為について平均賃金の1日分の半額以内でなければならず、1賃金支払期に数回の違反があっても、その減給の額は1賃金支払期に支払われる賃金の10分の1以内でなければなりません。
 国家公務員については、「1年以下の期間」「5分の1以下」の減給がされ、労働者本人にとっては民間企業よりかなり酷です。
 なお、減給処分では制裁措置として軽すぎるという場合に、「出勤停止」や「降職・降格」等の処分を行うことまで禁じているものではありません。


◆「減給の制裁」の該当性

 「減給の制裁」に該当するかどうか、という若干の問題があります。
 1つは、遅刻、早退または欠勤があった場合に、その不就労分を控除することです。この場合、労務の提供がないので、会社に賃金支払い義務はありません。これをノーワーク・ノーペイの原則といいます。もっとも、不就労時間に相当する賃金額以上の差し引きであれば、その超える額について減給の制裁となります(昭63・3・14基発150号)。
 2つめは、降職や降格の措置が「減給」に当たるかどうかです。降職とは、役職や職位を下げることをいいます。昇進の逆のパターンです。降職は、使用者の人事権の裁量行為と解され、その賃金の低下は職務の変更に伴う結果といえますので、「減給」には当たりません。これに対し、降格とは、職務グレード制度や職能資格制度を採用している会社で、資格やランクを下げることをいいます。昇格の逆です。降格は、人事評価の結果として、将来的に賃金を切り下げるものであり、いったん発生した賃金を減額するものでないことから「減給」に当たらないと考えます。
 3つめは、賞与です。賞与も賃金であるため「減給」の規制の対象となります。ただし、人事評価を経て賃金額が決定される場合は、査定を受けて具体的請求権となります。低査定の結果として賞与額が低額となっても、「減給」ではありません。

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