HOME >これで解決!労働実務Q&A>パート・派遣・女性>雇止め法理サイトマップ
労働実務Q&Aこれで解決!

雇止め法理

Q.

 労働契約には、無期労働契約と有期労働契約があります。有期労働契約に関する民法上の原則によると、契約期間が満了すれば、契約は当然に終了します。この更新を行うか否かは当事者の自由です。ただし、使用者の更新拒絶により、労働者が不安定な地位に置かれることも確かです。これを救済するために、雇止めに解雇権濫用法理を類推適用できるか否かが論点として浮上。雇止め法理が形成されてきた経緯や立法化された際の特徴などを教えて下さい。

A.

 労働契約が反復更新されると、期間についての約束事は形骸化し、労働者も雇用継続への期待をもつよになります。使用者が更新を拒絶する「雇止め」については、労働者保護の観点から、最高裁判例により、一定の場合にこれを無効とする「雇止め法理」が確立しています。2012年には労働契約法が改正され、19条が新設されました。若干の法律構成を整備したほか、判例の雇止め法理の内容や適用範囲を変更することなく、そのまま条文化されたのです。


◆判例で確立している雇止め法理

 半例上の雇止め法理には、大きく2つのタイプがあります。その1は、実質無期契約型といわれているもの。有期労働契約の雇止めについてリーディングケースとなったのが、東芝柳町工場事件(最判昭49・7・22)です。最高裁は、有期労働契約が期間の満了ごとに当然更新を重ねてあたかも期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態で存在している場合には、解雇に関する法理を類推すべきであると判示しました。
 その2は、期待保護型といわれているもの。実質無期とはいえない期待保護タイプについて雇止め法理を認めたのが日立メディコ事件(最判昭61・12・14)です。最高裁は、有期労働契約の期間満了後も雇用が継続されるものと期待することに合理性が認められる場合は、解雇に関する法理が類推適用されるとしました。
 近時の最高裁は、雇止め法理について、「期間の定めのある雇用契約があたかも期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態で存在している場合、又は、労働者においてその期間満了後も雇用関係が継続されるものと期待することに合理性が認められる場合には、当該雇用契約の雇止めは、客観的に合理的理由を欠き社会通念上相当であると認められないときには許されない」と定式化しています(パナソニックプラズマディスプレイ〔パスコ〕事件 最判平21・12・18)。


◆雇止め法理の明文化とその構造

 労契法19条が定める雇止め法理をみてみましょう。まずは要件から。
 ① 有期労働契約が反復更新されたことにより、雇止めをすることが解雇と社会通念上同視できると認められる場合(1号)、または、労働者が有期労働契約の契約期間の満了時にその有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由が認められる場合(2号)のいずれかに該当すること。
 ② 労働者が契約期間満了までに更新の申込みをしたか、または、期間満了後に遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをしたこと。
 ③ 使用者による当該申込みの拒絶が、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないこと。
 その効果如何。これまでの有期労働契約と同一の条件で使用者の承諾があったものとみなされます。
 法19条の特色は、第1に、判例法理で確立している2つの要件を法文化したことです。有期契約の反復更新という客観的事情に着目する1号と、合理的期待という主権的事情に着目する2号を規定。制定法のルールとして国民への一層の周知が図られることになりました。第2に、②の要件にあるように、労働者による契約の更新ないし締結の申込みを要件として明示したことです。申込み・承諾による契約の成立というオーソドックスな法律構成が整えられたのです。

ページトップ