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労働実務Q&Aこれで解決!

有給休暇の基準日

Q.

 新聞報道によると、今年度(2021年度)は前年度に比べ、企業の中途採用が16%増え、10年ぶりの高い伸び率になっているとか。というのも、新型コロナウイルス下でも人手不足の解消やデジタルトランスフォーメーション(DX)人材の底上げが不可欠なため。中途採用が多い企業では、それぞれの労働者の雇い入れから起算していくと年休の発生する日(基準日)がバラバラで、年休の管理が煩雑になります。年休の基準日を統一するにはどうしたらよいですか。

A.

 労働者の採用日が異なる場合には、年次有給休暇の発生日(基準日)が労働者ごとに異なり、年休権発生要件の1つとしての8割出勤の計算をする必要も加わって、事務が繁雑になります。多数の労働者を使用する事業場においては、基準日を全労働者について斉一的に取り扱う必要が生じます。基準日を統一する上での最大のポイントは、労基法は従業員の最低限の権利を定めたものであるため、法律よりも不利な労働条件になってはならないということです。


◆年休の基準日を統一する方法

 有給休暇の斉一的取扱いとは、有給休暇の基準日(権利が発生する日)をあらかじめ一定の日に統一することをいいます。実務上は、会社の有休管理の負担を軽減することができ、従業員にとってもわかりやすいため、多くの企業で導入されている制度です。
 ただし、最低基準たる労基法(1条2項)の性格上、勤務時間の算定にあたっては、常に切り上げる必要があります。
 労基法39条が定める年次有給休暇が発生するためには、6ヵ月以上の継続勤務、が要件。そこで、初回の有給休暇に限って、法定どおり与える、というケースが考えられます。これにもいくつかのバージョンがあります。
 まず、4月から9月までの間に入社した従業員については、初回に限り法定どおりとし、10月から3月までの間に入社した従業員には、基準日(4月1日)に有休を与える方法。
 入社月に応じて入社日に与える有休の日数を調整する方法(4月~9月入社は10日を付与するが、それ以降の付与日数を逓減する)。
 もっとも単純でわかりやすいのは、すべての従業員の入社日に10日を与える方法です。当然、入社後、初めて迎える4月1日には、11日与えなければなりません。
 いずれについても、入社日によって有利、不利の不公平感が生じてしまいますが、やむを得ないところでしょう。


◆行政通達とその考え方

 年休の斉一的取扱いと分割付与については、次のような行政通達(平6・1・4 基発1号)があり、要件が明確化されました。
① 斉一的取扱いや分割的付与により法定の基準日以前に付与する場合の年次有給休暇の付与要件である8割出勤の算定は、短縮された期間は全期間出勤したものとみなすこと。
② 次年度以降の年次有給休暇の付与についても、初年度の付与日を法定の基準日から繰り上げた期間と同じ又はそれ以上の期間、法定の基準日より繰り上げること。
 ①のケース。たとえば、基準日を4月1日に統一した場合、2月1日入社の人は、2ヵ月勤務で基準日に到達し、年休を付与することになります。法律上は6ヵ月勤務が付与要件ですが、4ヵ月短縮です。その短縮された4ヵ月は全期間出勤したものとみなし、実際に勤務した2ヵ月間の出勤状況を合算して、8割出勤かどうかを判定するということです。
 ②の年休の分割付与のケース。初年度の年休の10日について、採用時に5日、その6ヵ月後に5日というように分割して付与することができるか、という問題。法律上は可能です。ただし、次年度以降の繰り上げに要注意。たとえば、4月1日に入社した人に入社時に5日、6ヵ月後の10月1日に5日付与した場合。次年度の基準日は本来翌年の10月1日ですが、初年度に5日分を6ヵ月繰り上げていますから、同様に6ヵ月繰り上げ、4月1日に11日付与しなければいけない、ということです。

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