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労働実務Q&Aこれで解決!

フリーランス

Q.

 フリーランスとして働いたり、企業からの独立を志望する人が増えているようです。クラウドソーシングを手掛けるランサーズがまとめた「フリーランス実態調査2021」によると、国内のフリーランス人口は1,670万人と20年に比べ57%の増。自分の能力や生活スタイルに合わせて柔軟に働くことができることや、新型コロナウイルスの感染拡大で在宅勤務が普及するなど働き方の多様化も背景にあります。心配になるのが、法的立場や社会保障です。

A.

 会社員と比べて働き方、病気・けがという万一の際の保障には雲泥の差があります。労基法上の労働者に該当しないので、労働時間、賃金などのルールが適用されません。仕事中のけがや病気を補償する労災保険も原則、対象外。雇用保険にも加入できないため、失業保険もなし。健康保険の傷病手当金や出産手当金も受給不可。老後は厚生年金がなく、国民年金のみ。会社員は健康保険と厚生年金の保険料を会社が半額負担ですが、フリーランスは全額自己負担。年収が会社員と同じでも、手取り額は少なくなります。


◆フリーランスガイドライン

 多様な働き方の一つとしてだけでなく、ギグ・エコノミー(インターネットを通じて短期・単発の仕事を請負い、個人で働く就労形態)の拡大による経験ある高齢者の雇用の拡大、健康寿命の延伸、社会保障の支え手・働き手の増加などの観点からも、近年、「フリーランス」に注目が集まっています。
 フリーランスとして安心して働ける環境の整備に向けた取組として、政府は今年(2021年)の3月、「フリーランスの方々と事業者が取引をする際に、法律をふまえると、どのような点に気を付けるべきか」を整理したガイドラインを策定しました。
 このガイドラインにいう「フリーランス」とは、「実店舗がなく、雇人もいない自営業主や一人社長であって、自己の経験や知識、スキルを活用して収入を得る者を指す」と定義されています。


◆フリーランスと法令の適用関係

 独占禁止法は、取引の発注者が事業者であれば、相手方が個人の場合でも適用されることから、事業者とフリーランス全般との取引に適用されます。
 下請代金支払遅延等防止法(下請法)は、取引の発注者が資本金1,000万円超の法人の事業者であれば、相手方が個人の場合でも適用されることから、一定の事業者とフリーランス全般との取引に適用されます。
 事業者とフリーランスの間の契約は、業務委託契約、委任契約、請負契約などが多いと思われます。しかし、実質的に発注事業者との間に「使用従属性」があれば、労基法9条の「労働者」に該当し、労働関係法令が適用されるので注意が必要です。労働者であるか否かの実際的指標は、「指揮監督下の労働」であるといえるかどうか、「報酬の労務対償性」があるといえるかどうか、にあります。


◆発注事業者と取引する際の注意点

 フリーランスが取引を行う際は、発注事業者が以下の点を遵守しているかを見極めることが肝要です。
 第1は、優越的地位の濫用の禁止。取引の際に、発注事業者とフリーランスとの間では強者対弱者の関係になることがあります。優越的地位にある事業者が、その地位を利用して、フリーランスに、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることで、公正な競争を阻害するおそれがあるのです。このような行為は、独占禁止法や下請法の規制対象となる可能性があります。
 第2は、発注時の取引条件を明確にすること。発注事業者が、発注時の取引条件を明確にする書面をフリーランスに交付しない場合は、独占禁止法上不適切となります。下請法の規制対象となる場合で、発注事業者が書面をフリーランスに交付しない場合は、下請法3条で定める書面の交付義務違反となります。

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