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改正公益通報者保護法のポイント

Q.

 公益通報者保護法の特徴は、事業所内部への通報、行政機関への通報、マスコミ等への通報ごとに、異なる保護要件を設けていること。後にいくほど保護要件が加重され、ハードルが高くなる仕組み。逆にいうと、事業者内部への通報の要件を緩やかにして、その促進を図る法的枠組みです。つまり法は、企業に対し、コンプライアンス体制の確立、わけても、内部通報システムの構築を誘導しています。2020年、公益通報者保護法が改正されたそうですね。

A.

 2020年6月8日、公益通報者保護法の一部を改正する法律(以下「改正法」といい、現行の公益通報者保護法を「現行法」という)が成立し、同月12日に公布されました。近年、社会問題化する事業者の不祥事が後を絶たず、早期是正により被害の防止を図ることが必要と判断されたためです。施行日は、公布の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日からとされています。十分な準備期間を置いたうえで、おおむね2022年6月までに施行される予定です。


◆事業者の体制整備措置義務

必要な体制の整備(改正法11条)
 現行法には義務づけ規定はありません。改正法では、公益通報に適正に対応するため、事業者に対し、必要な体制の整備等(窓口設定、調査、是正措置等)が義務づけられました。具体的内容は指針を策定。なお、中小事業者(従業員300人以下)は努力義務です。
行政措置の導入(改正法15条、16条)
 内部通報体制の整備義務の履行について、その実効性の確保のために、行政措置(助言・指導、勧告及び勧告に従わない場合の公表)を導入しました。
守秘義務の導入(改正法12条、21条)
 現行法では、守秘義務の規定はありません。通報者に関する情報が漏洩してトラブルが生じたり、信頼性が害されることのないよう、内部調査等に従事する者に対し、通報者を特定させる情報の守秘を義務づけ、違反者に刑事罰を定めました。


◆外部通報の保護要件の緩和

行政機関への通報の条件(改正法3条2号)
 現行法では、通報対象事実の発生について、真実相当性が必要とされています。改正法では、これに加え、氏名、住所、通報対象事実の内容等を記載した書面を提出する場合の通報を追加しました。
マスコミ等への通報の条件(改正法3条3号)
 現行法では、保護要件として、真実相当性に加えて、特定事由のいずれかに該当することが必要。改正法は、特定事由について、次の2点を追加。 1つは、通報者を特定させる情報が漏れる可能性が高い場合。もう1つは、財産に対する回復困難または重大な損害。
外部通報体制(改正法13条2頂)
 現行法には、権限を有する行政機関について義務づけ規定はなし。改正法は、権限を有する行政機関における公益通報に適切に対応するために、必要な体制の整備を義務付けました。


◆保護対象の拡大

通報者の範囲の拡大(改正法2条1頂)
 現行法の労働者に加え、改正法では、退職者や役員が追加されました。退職者は、事業者との雇用関係がなくなり、心理的にも通報しやすくなるため。役員は、事業者の内部事情をよく知り得る立場にあるためです。
通報対象事実の範囲(改正法2条3項)
 現行法は、別表に定める法律で刑事罰の対象となる行為のみを通報対象事実としています。改正法は、行政罰(過料)の対象になる行為も通報対象事実に加えました。
保護内容の拡大(改正法7条)
 現行法の下においては、労働者が事業者から損害賠償責任の追及を受けることを恐れて通報をためらうケースが見られました。そこで、改正法は、事業者が通報者に対して通報により損害を被ったことを理由とする損害賠償請求を禁止することとしました。

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