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労働実務Q&Aこれで解決!

ジョブ型雇用

Q.

 経団連の調査によると、ジョブ型雇用を導入している企業割合は25.2%。ジョブ型雇用の導入理由としては、専門性を持つ社員の重要性が高まっているためと回答した企業が60.2%に達しています(「2020年人事・労務に関するトップ・マネジメント調査」)。今後は、システム・デジタル・ITや研究・開発といった人材獲得競争の激しい分野を中心に、ジョブ型雇用の導入・拡大が見込まれています。話題のジョブ型雇用とはどういうものですか。

A.

 今、経営環境の大きな変化により、日本型雇用システムの課題が顕在化しています。まずは、人事制度をグローバルに統一しなければ、海外の優秀な人材の獲得や定着が難しいということがあります。また、年功的な制度を残したままでは、特に競争の激しい分野でプロ人材や専門人材を獲得することは極めて困難です。ジョブ型雇用とは職務内容を明確にした上で最適な人材を充てる欧米型の雇用形態。職務を特定して雇用契約を締結し、契約で定める職務によって賃金が決まる制度です。


◆日本型雇用システムの特徴とメリット

 わが国では、高度経済成長期を経て、「新卒一括採用」「長期・終身雇用」「年功型賃金」を主な特徴とする日本型雇用システムが形成され、日本の経済成長の原動力となってきました。この雇用システムは、仕事(ジョブ)に対して人を割り当てる欧米の「ジョブ型」と異なり、社員(メンバー)を採用してから様々な仕事を割り当てる「メンバーシップ型」と称され、多くの企業で定着しています。
 日本型雇用システムは、次のようなメリットがあります。①企業は計画的な採用を行いやすい。②安定的かつ継続的な人材の確保。③異動等を通じて多くの社員が多様な能力を備えられる。④自社のビジネスに精通し、特有のスキルを身につけた人材の育成。⑤柔軟な人材配置による機動的な事業戦略の遂行。⑥雇用と経済面での社員の安心感と高いモラールの維持、会社への帰属意識の醸成。
 しかし、近年の経営環境の激変。日本型雇用システムが時代の要請にそぐわなくなってきた部分が露呈しました。デジタル化やグローバル化に必要な人材は、内部人材だけでなく市場価値が高い外部人材に頼らざるを得ないのです。ところが、長期勤続を前提とした報酬体系や組織文化が高いハードルとなって、中途入社の外部人材の確保が阻害されているのです。


◆ジョブ型雇用のコンセプトと導入

 では、ジョブ型雇用とは何か。日本型雇用システムの特徴と対比させつつ、そのエッセンスを見ていきましょう。
 その1は、新卒一括採用ではなく、その都度採用が原則。職務を特定して採用しますから、その職務に必要な人員のみを採用し、必要な人員が減少すれば契約解除も必然です。
 その2は、雇用保障がなく、人の出入りがあることが前提です。仕事がない、社員のパフォーマンスが悪いという状況では退職勧奨のリスクもあります。
 その3は、契約で定める職務によって賃金が決まります。日本の賃金のようにヒトに値札が付いているのではなく、職務(ジョブ)に値札が付いているのです。通常、企業は職務分析や職務評価を行い、職務記述書(ジョブデイスクリプション)を作成し、ジョブの価格を決定します。
 このようなジョブ型雇用のメリットとは。最も大きなものは事業に必要な人材を社の内外からフレキシブルに確保しやすいことです。それが個人間に競争をもたらし、スキルアップを促します。中高年の不活性問題も起きにくくなります。
 最後に、ジョブ型雇用の導入の検討。職務や役割を明確化しやすい管理職や専門職に適用するケースが目立っています。職務グレード制度や職務給・仕事給と親和性が高いため、接合も不可能ではありません。当面、日本型雇用の利点を中心に据えつつ、ジョブ型社員も活躍できるような複線型の制度を構築するため、模索すべきでしよう。

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