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労働実務Q&Aこれで解決!

定年制

Q.

 日本の高度成長期には、新卒一括採用、終身雇用、年功序列、定年制という4点セットが論理的必然でした。ただし、これは歴史的に見ても国際的に見ても、戦後の日本のみで通用した独自の慣行。欧米に定年制はなく、先進国では年齢差別を禁止する動きが大勢となっています。今や企業は、年齢フリー、国籍フリー、性別フリーというダイバーシティが世界の常識です。そこで、定年制は今こそ廃止すべきだという有力な見解をどう思われますか。

A.

 確かに、定年制を含む労働慣行が成り立ってきた前提条件が、今や崩壊しつつあります。社会の変化や経済的観点から、定年消滅を促す要因が見て取れるのです。その1は、長寿命化という生物学的要因。健康寿命も延びており、高齢者の就労者増は自然の流れです。その2は、定年制の消滅が経済成長に資すること。就労期を延ばせば、労働力人口の維持にはプラスとなります。ただし、定年制を含む長期雇用システムは、労働者にとってもメリットがあり、定年廃止は重大な選択です。


◆定年制の意義と法的有効性

 「定年制」とは、労働者が一定の年齢に到達することにより労働契約を終了させる制度です。定年制は、定年到達前の辞職や解雇が特に制限されない点で、労働契約の期間の定めとは異なります。法的には、就業規則の規定等を通してそれが労働契約の内容となっているときに効力を発生するものですから、一種の「合意解約」といえるでしよう。
 一定年齢の到達により労働契約を終了させる定年制は、法律上有効といえるか。定年制を定める就業規則は合理的といえるかどうかが議論されています。
 労働者の労働能力や適格性が存在しているにもかかわらず、一定年齢到達のみを理由にして労働関係を終了させるもので合理性がなく、また雇用保障の理念に反し、効力がないとする見解があるのです。
 判例は、定年制について、「人事の刷新・経営の改善等、企業の組織および運営の適正化のために行われるものであって、一般的にいって、不合理な制度ということはできず」(秋北バス事件 最判昭43・12・25)と判示し、その定めを有効としています。
 学説上も、長期雇用システムにおける雇用保障機能と年功的処遇機能が基本的に維持されている以上、それなりの合理性があり、公序良俗違反(民法90条)にはあたらない、とする見解が一般です。


◆高齢者の雇用保障を促進する法整備

(1)65歳までの雇用確保措置
 現行の高年齢者雇用安定法は、60歳定年制を定年に関する強行的な基準としています。
 また、65歳までの雇用機会を確保するために、①65歳までの定年引き上げ、②65歳までの継続雇用制度の導入、③定年廃止、のいずれかの措置を講ずることを事業主に義務づけているのです。
 さらに、2020(令和2)年には、高年齢者雇用安定法の改正により、70歳までの就業機会の確保を図る目的で、65歳から70歳までの高年齢者就業確保措置を講じることが事業主の努力義務とされました(2021年4月施行)。
(2)在職老齢年金制度の見直し等
 今年の4月から、厚生年金保険法の「在職老齢年金制度」が大きく変わります。従来の制度では、60歳から64歳の人は、「給料+年金」が月額28万円を超えると、超過分の半額が年金からカットされていました。この仕組みが緩和され、支給カットの基準が65歳以上の人と同じく、「給料+年金」合計で月47万円に引き上げられます。60歳以降のサラリーマンは、雇用延長期間中、年金カットを恐れて働き方をセーブする必要がなくなるのです。
 もっとメリットが大きいのが、「在職定時改定制度」の導入。今年の4月から、65歳以降に支払う保険料は、翌年の年金受給額に即反映され、働き続ければ年金が毎年増えていく仕組みに変更されるのです。いずれも、働く高齢者の経済基盤の充実を図るものであり、評価できます。

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