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成年年齢の引き下げと労働契約の締結

Q.

 わが国における成年年齢は、明治9年以降、20歳とされてきました。世界的には、成年年齢を18歳とするのが主流と聞いています。最近になって、公職選拳法の選挙権年齢などが18歳と定められ、国政上の重要な事項の判断に関して、18歳、19歳の若者を大人として扱うという政策が日本でも進められてきました。このたび民法の改正により、成年年齢が引き下げられたそうですね。いつから、どのように変更されたのですか。変更されないところもありますか。

A.

 成年年齢を18歳に引き下げることを内容とする「民法の一部を改正する法律」(平成30年法律第59号)は、平成30年(2018年)6月に成立し、令和4年(2022年)4月1日から施行されました。成年年齢の引き下げにより、18歳、19歳の人は、親の同意を得ずに、単独で、労働契約をはじめとして、様々な契約を有効に結ぶことができるようになります。一方で、お酒やたばこに関する年齢制限や公営競技の年齢制限等については、20歳のまま維持されますので、注意が必要です。


◆成年年齢と未成年者の法律行為

 令和4年(2022年)4月1日より、民法4条は「年齢18歳をもって、成年とする」と改正、施行されました。未成年者が、20歳未満から18歳未満に引き下げられたのです。ここで、未成年者の法律行為について、民法の規定を整理しましょう。
 未成年者は、行為能力の制限を受け、未成年者が契約を締結する場合は、法定代理人である親権者または未成年後見人の同意を得なければなりません(民法5条1項)。
 親権者等の同意がなければ、未成年者がした法律行為は取り消すことができます(同条2項)。取り消された場合、当該法律行為は「初めから無効」とみなされます(民法121条)。
 労働契約の締結は、法律行為ですので、未成年者が労働契約を締結するには、親権者等の同意が必要です。
 民法改正前は、成年年齢が20歳とされていましたので、20歳未満の者が労働契約を締結する際には、その親権者等の同意が必要でした。
 今回の民法改正により、成年年齢が18歳に引き下げられましたので、18歳未満の者が労働契約を締結する際には、親権者等の同意が必要ですが、18歳以上の場合は、親権者等の同意が不要になったのです。
 使用者としては、親権者等の同意の有無を確認すべき場面が狭まったことになります。


◆契約の締結に対する制限

 労働法は、未成年者の締結する労働契約につき、年齢に応じた保護規定を設けています。
 まず、労働者として使用できる最低年齢。使用者は、原則として、「児童が満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまで」、これを使用することができません(労働基準法56条1項)。つまり、中学校の義務教育終了時点までは、労働者として使用できないのが原則です。
 これには2つの例外があります。その1は、満13歳以上の児童で、非工業的事業の職業に、所轄労働基準監督署長の許可を受けて、修学時間外に使用すること。その2は、満13歳未満の児童について、映画の製作または演劇の事業に使用することです。


◆労働契約の締結権者

 親権者等の同意があることを前提に、未成年者を雇用する際、誰と契約を締結すればよいでしょうか。
 親権者または未成年後見人は、未成年者に代わって労働契約を締結することはできません(労基法58条1項)。民法の建前では認められる親の契約締結の代行(民法824条、859条)を、労基法は、未成年者保護のために修正しているのです。未成年者本人との間で契約を締結することが必要です。
 賃金についても、未成年者本人に支払わなければならず、親権者または未成年後見人が代わって受け取ることができません(労基法59条)。

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