HOME >これで解決!労働実務Q&A>いじめ・メンタルヘルス>不安への対処法サイトマップ
労働実務Q&Aこれで解決!

不安への対処法

Q.

 生きづらさを感じる昨今です。外国からわが国へ詐欺、窃盗や強盗を使嗾(しそう)するという殺伐とした世相。依然として減らない職場でのいじめ・嫌がらせ。上がらぬ賃金。リストラ、雇止め、解雇の不安。家庭においても、生活苦、借金の返済、夫婦・親子間のトラブル、別居、離婚、介護等々、押し寄せる悩みごと。加えて、コロナ禍の厳しい事業環境、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻・・・・・・。不安の種に満ちた世界。不安をとり除き、おさめる方法がありますか。

A.

 不安のない人生などというものはありません。人は一生不安とともに生きていくものです。身の回りに起きた出来事をいちいち心配していたらきりがありません。中国にも「杞憂」という言葉があるではありませんか。はたして、不安は悪いものでしょうか。不幸に直結し、とり除くべきものなのでしょうか。何らかのアラーム、警鐘としてありがたく受けとめるべきではないのか。不安を感じていればこそ、こうして生きていくことができるのです。

◆高年期に増加する様々な不安

 人生につきまとう不安。不安の大半は、おそらく将来が見えないために発生するのでしょう。高齢期になると、不安は一層深刻になります。得るものよりも失うものが圧倒的に増えてくるから。
 まず、仕事を失い、老後の金銭的不安が生じる。年金だけで暮らすのは、実際大変なこと。配偶者や友人に先に逝かれ、孤独感がつのる。最も大切な健康も失います。身体の不調や病気が多発するのです。認知症への恐怖心も。認知症のリスクファクターは老人に多い糖尿病、高血圧、高脂血症の3つです。
 不安は重篤な心の病を引き起こす契機ともなります。高齢者の代表的メンタル不調は、うつ病と病気不安症です。だいぶ前になりますが、文芸評論家の江藤淳さんは、「心身の不自由は進み、病苦は堪え難し」という遺書をのこして自死しました。心身、とりわけ心がコントロールできない苦しみは、悲痛なものに違いありません。
 人の脳は、他の動物に比べて前頭葉が異常に発達していて、悩み続けると他の認識や知覚にも悪影響を及ぼします。何よりも、私たちの身体も老いるに従って、エントロピー増大の法則(あらゆる存在は時間の経過とともに秩序を失っていくという法則)が働き、細胞機能が低下し、身体システムに混沌が生じて不調が出やすくなるのです。


◆意識の持ち方を変える

 精神科医の森田正馬(1874~1938)によって提唱された森田療法と呼ばれる「心の治療法」があります。
その一端を紹介しましょう。
 その1が、「あるがまま」。〔初級者向け〕です。様々な不安があっても、打ち消そうとはせず、「あるがまま」でいるのです。生きている以上、常に不安はつきまとう。不安を放置、受容し、不安と共生することが、窮地を脱する解決策だと喝破しました。効用は、重荷を下ろし、気分が楽になること。
 仏教の浄土系宗派が唱える「わが計らいにあらず」も同様の趣旨。「なるようにしかならない」と確信すると、不思議な安心感が訪れます。
 むかし、ビートルズが歌った名曲「LET IT BE」も同じですよね。「あるがままに」「なすがままに」が邦訳。がぜん、普遍性が出てきました。
 その2は、「不安常住」「恐怖突入」。いわば[中級者向け]。日常生活の中で不安は常住しているので、不断に「恐怖突入」を実践していくほかないというもの。毎日が本番の積み重ね。耐性を培い、体験学習の繰り返しにより、閾値を上げていく技法です。
 その3は、森田療法ではありませんが、まさに「不安の力」。〔上級者向け〕。不安こそ生きつづけることに必要不可欠なエネルギーの源泉と考えるのです。不安は、吐く息と同様、生きている証。何が起きるかわからない、はらはらどきどきする世界だからこそおもしろい。自己の拠りどころは自己のみと考える、究極の自立型人間へのエールです。

ページトップ